第6章 流されて異界
第126話 犬神
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石に巫女さん姿の彼女なら、この術は基本中の基本と言うトコロか。
但し、初歩の初歩。早九字だけで簡単に複数の犬神を浄化して仕舞うとなると、彼女の術者としての力量はかなり高い事が見て取れるのだが――
「こいつらは犬神。大峰山に居る大神から派生した狼神の犬神などではなく、人間が人工的に造り出した呪い神としての犬神!」
ふるべゆらゆらと、ふるべ!
剣を顔の正面に立て、普段は使用しない魂振り……つまり、身体強化系の呪文を使用する。その刹那、勝利をもたらせる剣に更なる強い輝きが宿り、身体の奥底から強い力が涌きだして来た。
弓月さんが敵になる……可能性を考慮した訳ではない。ただ、こちらの手の内を明かし過ぎるのも問題がある。そう考え、彼女の前では一部の術を封印。それに、元々、俺の家系は神道系の家系。当然、魂振りもその術の内に含まれて居る。
狂ったように首だけの犬が同時に五体、空中を舞った。そして同時に足元からも同じだけの犬神が――
しかし!
アガレスが居ずとも、相手は所詮一般人を呪い殺す為の人工精霊……つまり、人間が造り出す事が出来る霊的な生命体。この程度の連中が千や二千、束になって襲い掛かって来ても今の俺を害する事など出来る訳がない。
俺は半端者だが、それでも龍種。この程度の連中に遅れを取っては、彼の世に行った後に、御先祖様に申し訳が立たなくなる。
「犬を首まで穴に埋めて餓えさせ、怨みが最大と成ったトコロで首を刎ねる。そして、その首を今度は人の往来する道に埋め、多くの人々の足で踏ませる事により更に呪いを強くする」
こうやって出来上がった怨念の塊が今、俺たちの前に現われた犬の首だけの魔物。
弓月さんの問いに答えながら、更に、同時に四方から跳びかかって来る犬神を、三度手首を翻しただけで無力化して仕舞う。その姿はハルケギニアのラ・ロシェールの街で野犬に囲まれた時と同一人物だとは思えない動きのはず。
そう、こいつらは犬神。そもそも、ここは人里からは少し離れた山の中。付近に野犬の群れが居ると言うのなら未だしも、先ほどから度々聞こえて来ていた犬の遠吠えの数は異常。
少なくともこの街に到着してからコッチ、俺の感知能力が野良犬の存在を察知した事はない。
地を這うように接近しつつ有った犬神を数体散じさせる有希。後から後から、まるで地の底から湧き出して来るかのような犬神と雖も、ここに集う者たちの前では単なる作業で処分して行ける相手でしかない。
その有希が作り出した唯一の安全地帯に、表の世界で達人と言われる存在を遙かに凌ぐ速度で斬り込み、庭に降り立つ俺。それと同時に振り抜かれる白銀の一閃。刹那、眩いまでの銀が爆流となって斜め上へと駆け抜ける。
その瞬間、俺を支点にして前方を扇型に安全地点
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