第6章 流されて異界
第126話 犬神
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。そして、彼女を抱き留めた腕に感じる生暖かい感触。
――結界が破られたか。
意外に冷静な頭でそう判断する俺。それならば、さてどうする。
現状、この部屋を護る結界は存在する。但し、これも時間の問題だろう。破られる度に次々と防壁を立ち上げ続ける。これは可能だが、そもそもそんな事をするぐらいなら、こんな囮作戦など労しはしない。
今回の呪いの矛先が偶々弓月さんの従姉に向いて居るだけで、そもそも高坂の家に繋がる人間ならば誰でも良い可能性もゼロではない。
いや、むしろ、これまで数年間に犠牲になった人間たちの顔ぶれから推測すると、むしろそちらの可能性の方が高いと推測出来る。
短い逡巡。しかし、結論は早い。今回はこの場で迎え撃つ!
刹那、障子に映る庭木の影が揺れ――
低い獣の唸り声。そして、微かに感じるだけであった獣臭が俄かに強くなる。
十……いや、そんな数では納まらない。
縁側から迫って来るような威圧感。多くの猛獣が其処に居る存在感。低い、威嚇の為のうなり声が、重なって、重なって、重なり合い――
一瞬、視界が歪む。この時、世界が変わった瞬間を経験――つまり、結界が破られた、と言う事。そしてそれと同時に表皮が弾け、俺の周囲で紅い血霧が発生。
その数三つ!
これは俺が施した守備用の結界の数に合致。ひとつはこの部屋。いまひとつは弓月さんの従姉の部屋。そして最後は――
マズイ!
最早悠長に身を隠す結界の内に籠って居られる訳はない。有希の肩を軽く左手で触れ、強く右脚を蹴る。そしてほぼ一瞬の後、二間の距離を無にして、先ずは左右に張られた注連縄。次いで障子を突き破ると同時に右腕を一閃。
その刹那、一瞬にして現われた光り輝く長剣が、大きさにして三十センチ程の丸い物体を斬り裂いた!
チッ、予想通り最悪の外道が相手か!
刹那、冷えた空気が肌と意識を同時に撫でた。
鼻を衝く獣臭、そしてそれにも勝るとも劣らない鬼気を放つ異形たち。その異様な姿形をどう表現するべきか。
縁側を、そして、和風の庭園を埋め尽くす多種多用な丸い物体。
まるで闇深き海の底から次々と現われ出でる異形。手も、まして足も存在しない、見様によっては愛らしい、と言う表現が出て来ても不思議ではない形。
有る物はブチ。有る物は耳の垂れた物。中には狼に似た物や、ハスキー犬などの大型の犬種も存在する。
煌々と輝くふたりの女神。冬の夜に相応しい冷たい大気が目蓋を、そして頬を突き刺し、呪いに相応しい腐臭が強い吐き気を誘発させた。
「これは一体、何モノなのです、武神さん!」
俺の右側から跳びかかって来たふたつの首を有希が、そして反対側を九つの格子状の光で浄化して仕舞った弓月さん。これはおそらく早九字。流
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