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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第126話 犬神
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付いて来ている】

 心の中にのみ響く有希の声。そして同時に強く感じる彼女の香り。
 ここはうら若き女性の部屋。部屋の中心には明らかに何者かが寝て居ると思しき布団が敷かれ、その布団の足元の方に抱き合うように――丁度、体育座りをした有希の背中を抱き留めるような形で存在する俺。
 どうも有希は、俺の鼓動を感じると安心するらしいのですが……。
 ただ、なんと言うか、見ず知らず……とは言い難いけど、それでも病人のいる部屋で何と言う不謹慎な姿。バカップルぶりにも程があるだろう、と言われても仕方のない状態。

 但し、現在の俺と有希の姿が見える人間が本当に存在しているのならば、ですが。

 そもそも、ここは何者かの呪いが溢れている場所。まして、明日の夜……最悪、今夜中に何か危険な事件が起きる可能性の高い場所。そのような場所で意味もなくバカップルぶりを披露する訳はない。
 そう、今の俺たちは仙術により他者の目から見えない存在となっている。
 もっとも、完全にその場から消えて居る訳ではなく、其処に存在して居る事を他者から認識出来なくしているだけ。当然、臭いや気配などは完全に断って居るのですが、それでも大きな物音を立てて仕舞えばアウト。更に直接触られてもアウト。そうすると出来るだけ静かに、そして、小さくして居なければならず……。

【弓月さんの従姉には移動して貰って正解やったな】

 接触型の【念話】で答える俺。腕の中で微かに首肯く有希。彼女の手の中には普段通り、小さな文庫本が。
 まったく緊張している様子はなし。但し、現在の彼女自身は普段よりも少し不機嫌。
 もっとも、これでもこの部屋の護衛に入ろうとした時に比べると大分マシになったのは間違いないのですが……。
 ……有希には弓月さんの次の動きの予測を伝えてあったハズなのに。

 少し恨みがましい視線で有希が目を落としている文庫本に視線を送る俺。もっとも、俺自身は暗視の術を行使して居る訳ではないので、その本の内容までは分からなかった。

 尚、この布団の中で寝た振りをしているのは弓月桜さん。当初は有希、もしくは万結が布団の中で囮の役を。そして俺が穏行の術を行使して夜の襲撃に備える……と言う心算だったのですが……。
 その案には何故か弓月さんが強硬に反対。いや、彼女の言うように、この事件自体が弓月の家に持ち込まれた事件であるが故に、自分が安全な場所に居る訳には行かない、と言う言い分には一理も二理もあると思いますが……。
 ただ、そうかと言って、弓月さんを囮に。俺一人が穏行の術を行使してその護衛。有希と万結が弓月さんの従姉を護る、と言う配分は……。

 敵の力量如何によっては、非常に危険な状態と成りかねない。俺は自分の実力はある程度分かっている心算ですが、弓月さんの実力は知りま
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