1部分:第一章
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ペラの主人公で稀代の女たらしである。だがオペラの中で実際に女性を陥落させているかどうかは昔から議論になっている。キルケゴールまでそれに加わっている。そんなことは序曲でわかるだろう、あの官能的な序曲は何だ、という者もいる。だがそれにしては劇中の彼はどうにも逃げ回ってばかりなのだ。実に慌ただしい。それを見ていると本当に女性を陥落させているのは不安になる。おそらく劇中では一人も陥落させていないのだろう。そうとも思える。
「じゃあポーランドの女の子は?」
「皆淑女よ」
これははっきり言えばハッタリだ。皆が皆そうではない。
「ママだってそうだったし」
「イタリア男を知ってるのに?」
「それはそれ、これはこれよ」
都合の悪いことを忘れてみせるのはどの国でも同じだ。
「身持ちのいいママなのよ」
「少なくても結婚してからは、だね」
「そういうこと。わかったかしら」
「よおくね」
ジュリアスは笑みを浮かべてそれに頷いた。
「じゃあこれから何処に行くの?身持ちのいいポーランドのお嬢さん」
「何処へでも」
少なくとも身持ちのいい返事ではなかった。
「貴方が行きたい場所よ」
「それは困ったね」
ジュリアスはエミリアの言葉を受けてその端整な顔に笑みを作った。
「これだけ奇麗な街だと何処に行くか迷うよ」
「そうでしょ、奇麗でしょ」
その言葉がどうやらエミリアの琴線に触れたようである。
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