5部分:第五章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
第五章
「よかった、外れました」
「本当だよ、外れてよかったよ」
男の子だけでなくおじさんもまたほっとした言葉を出していた。
「この仮面はね。一度着けたらお札を貼らないと動きが止まらなくなるんだ」
「そうだったんですか」
「それに外れなくなるしね」
このことは男の子は今よくわかった。
「だからね。僕は絶対に着けないんだよ」
「呪いか何かがかかってるんですか?」
「うん、実はそうなんだ」
難しい顔をして男の子にまた述べた。
「実はね、もう何百年も前にできた仮面で」
「何百年ですか」
「確かイタリアのマントヴァの方だったかな」
首を傾げながらイタリアのある街の名前を出した。
「そこで作られたらしいんだ。せむしの道化師が着けていてね」
「せむしって何ですか?」
これは男の子の知らない言葉だった。目をしばたかせてそれが何か尋ねてきている。
「それって何ですか?」
「ああ、最近の子は知らないんだ」
おじさんは男の子の少しきょとんとした言葉に顔を向けたのだった。
「せむしって何なのか」
「それでなになんですか?本当に」
「背中がね、丸くなって出ている人のことなんだよ」
「それをせむしって言うんですか」
「そうなんだ。まあ今は使わない言葉だけれど」
だから今の子供はノートルダムのせむし男と言われてもわからないのである。
「昔はそうした言葉もあったんだよ」
「そうだったんですか」
「そうなんだ。その人はね、一人娘を失ってとても嘆き悲しんだ人で」
おじさんはそのせむしの道化師のことも語るのだった。
「その呪いが乗り移った仮面らしいんだ」
「この仮面がですか」
「そう。だから着けたら誰でもすぐに道化師になれるけれど」
「お札じゃないと外れないんですね」
「そうなんだ。だから僕は絶対に着けないんだ」
おじさんは強張った顔で男の子に答えた。
「絶対にね」
「それがこの仮面なんですか」
「普段はお札を貼ってるんだけれど」
おじさんの言葉がここで残念そうなものになった。
「外れてしまったんだね。それで君は」
「すいません」
「いや、謝らなくていいよ」
先程の話に戻ったがそれはいいというのだ。
「それはね。いいから」
「そうなんですか」
「確かにあの仮面は呪いはあるけれど」
このことを言ってからだった。
「それでもね。お札でそれは取れるものだし」
「それでも何かあるんですね」
「さっき言ったけれど。ピエロはすぐになっちゃいけないものなんだ」
おじさんが言いたいことはこれだったのだ。
「すぐにはね。なっちゃいけないものなんだよ」
「それはどうしてなんですか?」
「何でもそうだけれど努力してなるものだからなんだ」
だからだというのである。
「だ
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ