巻ノ十五 堺の町その六
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「我等誰一人欠けることなく勝てます」
「御主達だけではか」
「勝てませぬ」
「しかし拙者がいればか」
「はい、我等十人に殿の軍略と武勇があれば」
それでというのだ。
「勝てる」
「だといいがな」
「戦の時は何でも申し上げ下さい、どの様な相手にも勝ってみせます」
まさに誰一人欠けることなく、というのだ。
「そうしてみせますので」
「ではその時はな」
「お頼み申す」
こうした話もしつつだった、一行はすっぽんを楽しんでだった。その後はそれぞれ堺の町に出て芸をして銭を稼いでだった。
宿に集まりそこで一泊してだった。次の日に。
伊佐が微笑んでだ、幸村にこう言った。
「殿、今日は茶を飲みに行くとのことですが」
「よい茶の場所を見付けたか」
「はい」
まさにという返事だった。
「一つ」
「そこは何処じゃ」
「外にあります」
「外、とな」
「何でもそこは外で飲む場所でして」
「堺にはそうした場所もあるのか」
「千利休殿が設けられた場所だとか」
伊佐はここでこの者の名を出した。
「そこは」
「その利休殿が」
「はい、そこに行かれますか」
「実は中で飲むと思っていた」
幸村は伊佐にこう答えた。
「茶室のな」
「拙僧も最初はそう思っていましたが」
「そうした飲み方もあるか」
「そうです、そrでなのですが」
「その飲み方も面白そうじゃ」
幸村は伊佐だけでなく他の者達にも述べた。
「それに大勢で楽に飲めるしな」
「ですな、広い場所ですと」
「外でしたら」
「我等全員で楽に飲めますな」
「茶室は狭い」
このこともだ、幸村は言った。
「我等全員で入るとなると厳しい」
「ですな、どうしても」
「我等十一人となりますと」
「茶室の大きさにもよりますが」
「難しいですな」
「だから外で飲もうと思う」
広い場所でというのだ。
「そうな」
「では、ですな」
「これより外で飲みますな」
「そして楽しみますな」
「そうしようぞ、それでじゃが」
また言う幸村だった。
「御主達茶の作法はわかっておるか」
「はて」
自分の顎に右手を当ててだ、猿飛は怪訝な顔になって幸村に言葉を返した。
「そう言われますと」
「佐助は知らぬか」
「そういえば茶道の作法は」
知らぬというのだ。
「それがしは」
「そうか、佐助は知らぬか」
「それがしも話は聞いていますが」
「それがしもです」
穴山と由利は少し申し訳なさそうに答えた。
「茶道の作法については」
「疎いです」
「これまで茶も飲んでいましたが砕けた場所で、でした」
海野も言う。
「ですから作法を守ったものは」
「そうじゃな、拙者もな」
幸村自身もというのだ。
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