巻ノ十五 堺の町その四
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「ではな」
「はい、昼飯時ですし」
「それで、ですな」
「これから飯を食う」
「そうしますな」
「先に話した通りすっぽんじゃ」
それを食おうというのだ。
「それを食うぞ」
「はい、では」
「これよりすっぽんを食いましょうぞ」
「皆で」
「そしてじゃ」
幸村は家臣達にすっぽんの後のことも話した。
「宿を見付けた後はな」
「はい、その後はですな」
「茶ですな」
「茶道の茶を飲みますな」
「そうしようぞ、しかしその為にはな」
飯のその時はというのだ。
「銭が必要じゃ」
「すっぽんを食い宿位は何とかなりますが」
根津がその銭の話をした、主に対して。
「しかし」
「茶にまでなるとな」
「それに明日になりますと」
先のことも言うのだった。
「不安ですな」
「だからまた芸をしてな」
そのうえでというのだ。
「銭を稼ごう」
「わかりました、飯を食い宿を取った後は」
「皆でまたしようぞ」
旅の宿賃を稼ごうというのだ。
そしてだ、その話をしてだった。
一行はすっぽんを食べる為に店に入った、そうしてだった。
そのすっぽんの鍋を全員で囲んだ、そのすっぽんを食べると。
穴山は唸ってだ、こう言った。
「鳥に似た味じゃな」
「うむ、確かに」
望月もそうだとだ、穴山に応えた。勿論食べながら。
「これは鳥の味じゃ」
「鶏や雉じゃな」
「ただこれが違うな」
見れば煮凝りの様なものもだ、鍋の中にある。一同はそれも食べながらそのうえでその煮凝りの様なものも食べて言うのだった。
「この肉とは違うものがな」
「そうじゃな、しかしこれも美味いのう」
「これはこれでな」
「実に美味い」
「そうじゃな」
「ただすっぽんはな」
ここで行ったのは海野である、彼が言うことはというと。
「わしは噛まれたことがあるが」
「すっぽんにか」
「そうじゃ、そのすっぽんは食わなかったが」
それでもというのだ。
「一度噛まれると中々離さぬ」
「何でも雷が鳴るまで離さぬそうじゃな」
「いや、水に漬ければ離す」
こう海野に話した。
「それでな」
「何じゃ、雷が鳴ったら離すというのは嘘か」
「それは違う」
「水か」
「そうじゃ、修行中に噛まれたことがあったがな」
水辺で修行している時にだ、水のことなら右に出る者がいない海野が非常によく修行する場所であるがそこでだったというのだ。
「中々離さずな」
「苦労したか」
「その時食ってもよかったが既に魚を食って満腹じゃった」
それでというのだ。
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