巻ノ十五 堺の町その一
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巻ノ十五 堺の町
幸村達に鍋を馳走した老人は大坂の城を見ていた、町にあって飄々としている。
しかしだ、その彼の周りにだ。
町人の身なりをしているがそれにしてはやけに目の鋭い者達が来てだった。そのうえで彼を囲んで言って来た。
「どうでしたか。真田のご次男殿は」
「他の十二神将の方々はどなたも恐ろしき方と申されていますが」
「家臣の方々も」
「長老もそう思われますか」
「その様に」
「ほっほっほ、わしも同じじゃ」
老人はこう周りの者達に答えた。
「その様に思う」
「やはりそうですか」
「我等も遠くに見ていましたが」
「気付かれぬ様にするのに苦労しました」
「どの方も時折見てきました」
「我等を」
幸村主従がだ、そうしてきていたというのだ。
「実に」
「それが厄介でした」
「恐ろしいまでに鋭いです」
「勘がいいです」
「うむ、わしも素性は隠しておったが」
それでもというのだ。
「気付かれぬ様に気配を全て変えていなければな」
「気付かれていた」
「そうなっていましたな」
「学もありますし」
「やはり他の十二神将の方々が仰る様にですか」
「徳川の味方になってくれればよい」
老人はこう周りに答えた。
「真田家自体がな」
「しかしですな」
「真田家が徳川家の敵となれば」
「我等の仕える徳川家と」
「そうなればですな」
「その時は」
「厄介な敵となる」
実に、という口調での言葉だった。
「だからここは半蔵様にも申し上げる」
「幸村殿は恐るべき方」
「真田家とは、ですな」
「ぶつかるべきではない」
「徳川家も」
「まして上田は険しい地」
老人は真田家の領地であるこの地のことも話した。
「攻めにくく守りやすい」
「そのこともあって、ですな」
「真田家と戦になることは避けるべき」
「そうあるべきですな」
「我等は」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「だからわしも半蔵様に申し上げよう」
「では」
「長老もその様に申し上げて」
「そしてそのうえで」
「あの御仁のこともお話しますか」
「そうするとしよう、さて」
ここまで話してだった、老人は飄々とした顔のまま述べた。そしてこうしたことを言ったのだった。
「この町を見ていくか」
「大坂を」
「そうしていきますか」
「これから羽柴殿の本拠となるここを」
「じっくりと見て」
「そして、ですな」
「うむ、それから駿府に戻り」
そしてというのだ。
「半蔵様に申し上げよう」
「いや、この町は賑やかですな」
「この前まで石山御坊もなくなり閑散としていましたが」
「それが、ですな」
「あっという間にここまで賑やかになり」
「さらに大きくなってい
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