3部分:第三章
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それならば」
「大人しくこの寺を明け渡そう」
「左様か。それならばよいのだ」
行間はまずはその言葉を受けた。だがもう一つ問題があった。
「しかし。これからどうするのだ」
「これから?」
「そう、これからだ」
また獣達に対して述べた。
「これからどうするのか。寺には入られぬぞ」
「何、構わぬ」
「既に家はある」
こう行間に答えるまでであった。
「元の場所がな」
「そこに戻るだけか」
「ただ。約束しておく」
彼等はまた行間に対して言ってきた。
「我等はもう二度とこの寺には入らん」
「二度とか」
「左様、我等とて誇りがある」
「その誇りにおいて誓おう」
こうまで言うのだった。
「二度とこの寺には足を踏み入れぬとな」
「今全員で誓おう。それでよいか」
「うむ、その誓い受けた」
行間もまたその言葉を受けたのであった。受けた証に強く頷いてもみせた。
「では。その様にな」
「うむ。それでは御坊よ」
「この寺。存分に栄えさせるがいい」
獣達はそこまで言って姿を消した。こうしてこの寺での怪異も化け物も全て消え去ってしまったのであった。
それから獣達は姿を現わすことはなく寺には平穏が戻った。行間はこの寺の住職となり以後寺を栄えさせることとなった。その話のはじまりにはこうしたことがあった。全てのはじまりには何かしらの出来事があるものであるがこの寺についても行間についても同じであるということだった。近江の古い話であり中々興味深い話であるのでここに記しておく。なお今もこの寺はある。しかしどの寺であるのかは覚えている者は少ないという。
化け物寺 完
2008・2・14
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