三十七話:ご先祖様と日常
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「虫であろうと人であろうと命であることには変わらん。それにも関わらず虫を殺すのには罪悪感を抱かず、人には罪悪感を抱く。そちらの方が余程命を馬鹿にしているのではないか?」
「そ、そんなことは……でも! 殺す方がもっと命をバカにしとるんやないか!」
「そうかもしれんな。しかし、我ら人は命を奪わずして生きることは出来ぬ。ならば全てを背負う覚悟をして命を奪う他ないではないか。種族によって命を奪うことを戸惑う事を我はせん。どんな命であろうと価値がないと思えば我は平等に摘み取る」
彼が言っていることがジークには理解できなかった。
だが、ただ一つだけ理解できたこともある。
それは今の彼は自分の理解の外にある人間だという事。
「して、どうする? 汝であるが故に剣を向けてはいぬが……汝が我に歯向かうのであれば我の望むところよ」
「……ッ!」
再び獰猛な笑みを浮かべた彼の手に二本の剣が握られているように幻視したジークはつばを飲み込む。
怖い、そう思わずにはいられないが引き下がるわけにはいかない。
人の命がかかっているのは勿論だが、何よりもリヒターが普通の状態ではないのは明白なので止めるしかない。
そう考えたジークはバリアジャケットを纏い構え鉄腕を開放する。
「くくく、その鉄の腕……懐かしい」
「……なぁ、あんた誰や? リヒターやないやろ」
「さて……どうだろうな」
ニヤリと笑う姿にリヒターがリヒターではないことに確信を抱く。
なら遠慮はいらないと思い拳に力を籠める。
そして一歩踏み込もうとしたところで―――
「止まってください! 時空管理局のスバル・ナカジマです。戦闘態勢を解いてください」
青色の髪を短めに切り揃えた女性スバル・ナカジマが現れた。
それを見たジークは戦闘態勢を解きスバルの方を向く。
一方のリヒターは軽く溜息を吐きながらジークを見る。
「敵の前で構えを解くとは……落第よの。これが敵の罠やもしれんというのに……我が子孫が心配するわけよ」
「我が子孫? 何言っとるんや」
「とにかく事情は聞かせていただくので、今は倒れている男性を治療の為に運ばせてもらいます」
「はあ……そのような盗人を助けて何になるのか。まあ、もうよい。勝手にせい」
この空気の中戦う気が失せたのかその場に座り込むリヒター。
スバルは彼の姿を油断なく見ながら犯人への応急処置を行う。
彼女は休暇で出歩いている時に逃げ出していった女性のただならぬ様子を見つけて何事かを聞き応援を頼むと共に現場まで来た次第である。
(あー……ジーク? 聞こえるか?)
(リヒター! 今どうなっとるん!? というかあれは誰や!)
(あー…うん。取りあえず目の前に居るのは俺であってご先祖様
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