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フリージング 新訳
第33話 Goodspeed of the East 1
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のではと思ってしまう。

「いや、それを言うならラナもかな…」

あの子はどちらかと言うとお嬢様ではなく、お転婆娘といったところだ。
自分よりはマシだとは思うが、それでも普通の学園でなら恐らくリーダーになれる素質の持ち主だろう。
ゼネティックスではシフォンがいるから難しいが、それでも彼女には素晴らしい素質がある。自分とは違い……

「……あれ?」

そこで気がついた。気がついてしまった。自分の周りにいる人たちは、全員が全員自分とは違って、行動原理がある。
ラナには、一族の掟が。シフォンには、恐らく最強としての自負が。イングリットさんには、秩序が。アーネットさん達には上級生としての誇りが。
そしてサテラには、負けないという信念がある。
では自分にはなにがある?
今までの戦いも、女神の電話で行かされて、成り行き的にその場に流されてやってきたにすぎない。
自分にはアオイ・カズトには、自分が何もない。

「……俺は、がらんどうなんだ」

転生してからというもの、原作通りに動かされ、自分で選んだ道は殆どない。これではまるで人形だ。今回のことだって、学園長に言われなければ来なかっただろう。
どうして急にこんなことを思ったのだろう。あの小鬼は出てきていない。これは自分が気づいたことだ。

ふらふらと歩いていると、中央に噴水のある庭園へと辿り着いた。

「はぁ〜、やっぱりこの人の書く文章は素晴らしいわ〜」

ぼんやりとしていると、控えめながら、情熱の篭った声で何かを絶賛している人が目に入った。
薄い緑色の髪をポニーテールにした美しい、と言うよりも可愛らしいが似合うであろ女子生徒。
ベンチに座って、本を抱きしめている。
声をかけるべきなのだろうか。
そう迷っていると、逆に相手の方がカズトに気がついた。

「あ、ど、どうも……」
「こ、こんにちは…」

場に沈黙が走る。それは殺気立ったものではなく、お互いに困惑してなにも言えないと言うものだった。

「えっと……」
「ひっ……!」
「………………」

一歩近づこうとすると、怯えるように引かれてしまう。怯えさせる要素などないはずなのだが、恐らくは男性そのものが苦手なのかもしれない。
どうしよう……と、悩んでいると女性の手にある1冊の本が目にとまる。

「そ、その本って面白いんですか?」
「え?」

すると、女性の警戒心が一瞬だけ薄れた気がした。自分の興味のあるものの話ならば、もしかしたら聞いてもらえるかもしれない。

「さっき、その本を大絶賛してたので、面白いのかなぁ〜なんて……」
「……ええ、これは、私が一番好きな作家さんの最新作で、何度読み返しても感動してしまうんです」

警戒心が解けてからは、意外にも打ち解けることができた
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