4部分:第四章
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。公式には。
「しかしその御一人は確か」
「幼くして死んだというのだな」
「違うのですか?」
怪訝な顔で女に対して言い返した。
「それは」
「もう一人は生きておったのじゃ」
「生きていた」
「そうじゃ。それがわらわなのじゃ」
「貴女様が」
「我が名はディアナ=ド=ヴァロワ」
「ディアナ=ド=ヴァロワ」
ダルタニャンにとってははじめて聞く名であった。
「それが貴女様の御名前」
「左様。アンリ二世とカトリーヌ王妃の二番目の娘じゃ」
「アンリ二世陛下のことは御存知です」
ダルタニャンはここでまた己の記憶を辿った。
「ディアヌ=ド=ポワティエ様との間に御子がおられたことも」
「詳しいのう。そこまで知っておるか」
「その御子ではなく貴女様は」
「何度でも言うぞ。わらわはカトリーヌ王妃の娘じゃ」
このことをまたダルタニャンに告げるのであった。
「二番目のな」
「しかし何故この様な場所に」
「それは知らぬようじゃな」
今のダルタニャンの言葉を聞くとこのディアナの顔に嘲りと不吉なものが宿った。
「流石にな」
「貴女様は王家の方」
ダルタニャンはこのことを強調する。
「それがどうして。この様な場所に。そもそも」
「知れたこと。幽閉されたのじゃ」
「幽閉!?」
「左様、ここにじゃ」
忌々しげな声でダルタニャンに語ってきた。
「他ならぬあの男の手によってな」
「あの男!?」
「そう、先の王じゃ」
「先の王。まさか」
ダルタニャンはこの言葉ですぐに事情を察した。
「それではやはり」
「左様、アンリよ」
アンリ四世のことだ。現フランス王であるルイ十三世の実の父でありブルボン朝の開祖である。ダルタニャン達にとっては神に等しい存在だ。
「あ奴にのう。閉じ込められたのよ」
「!?どういうことだ」
「わからぬか。わらわはヴァロアの者」
「それは承知していますが」
「若しわらわが世におり子でも生まれればどうなるか。わかるのう」
「ええ、それならば」
こう言われればわかるダルタニャンであった。伊達に王の側にいるわけではない。宮中というものは常に陰謀が渦巻いておりダルタニャン達銃士達もそれを目にすることが多いのだ。彼にしろ若いながらそういった事件には色々と関わってきているのだ。
「わかります。だからこそここに」
「わかったのう。元は姉君の影であったが」
「マルグリット様の」
「姿形がよう似ておるじゃろう」
「ええ、確かに」
鏡に映したようだ。顔を見ればまさにあのマルグリット=ド=ヴァロワと瓜二つだ。それを見れば確かにヴァロワ家の者だ。
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