3話 余興
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ならば、何をしに来たのだ。そう問おうと思ったのだが、その前にまた王とパティルナ様が楽しそうに会話を広げていく。何が言いたいのだろうか。考えるが、特に何も思い当たらなかった。仕方なく、楽しそうに語り合う二人を眺めていた。
「なぁ、ユイン。お前は今、楽しいか?」
「……どうでしょう。考えた事もありませんでした」
唐突に、王が此方を見た。質問の意味は解るが、意図が解らなかった。
「そうか、まぁそうだろうな。ユン・ガソルに来たお前は、只々部下の訓練に明け暮れていたと聞いている。それが悪いとは言わないが、お前は今を楽しむことができているのか?」
「……」
「答えられんか。まぁ、今はそれでもかまわん。だが、俺の部下である以上、いつかは満足できる解答を探し出しといてくれよな」
「解りました」
何故か、飲まれた。王はただ、俺に楽しいかと聞いただけなのだが、返す言葉が見つからなかった。ソレに、少しばかり驚く。訓練を施し、麾下が強くなることは純粋に嬉しく、充実した日々が送れていたと思う。だが、王が言うように楽しめていただろうか? 答えが出てくる事は、無い。
「あーあ、ギュランドロス様。それじゃだめだよ、解り辛いって。もっとシンプルに言わなきゃ。ユインは元メルキア軍人だから、いろんな葛藤があるだろうし、心無い事を言われる事だってきっとたくさんあると思うな。だから、ギュランドロス様は心配してるんだよ。ユインがウチで楽しくやれるのかな、ってさ」
「おま、パティ! さっきも似たような事を言ったが、そう言う事は解ってても言うんじゃねぇ!」
「えー、良いじゃん。別に何も減ったりしないんだし」
「減るんだよ、なんかこう、大事な何かが!」
三度、二人で騒ぎ出す。声を荒げるギュランドロス様にパテルナ様は、果敢に応戦する。その様子は、控えめに見ても仲が良く思え、どこか温かく感じた。苦笑する。真剣に考えた自分が、酷く滑稽だった。
「ふふ、お二人は、本当に仲がよろしい様だ」
「おう、なんたって俺様自慢の三銃士の一人だからな」
「そうそう。あたしたちがいないと、ギュランドロス様はダメダメだからね」
「何だとこの野郎!?」
本当に仲がよろしい様だ。そう、思った。バカらしいことで言い争う二人を見ていると、自然と自分も笑みを浮かべていることに気付く。あまり笑う事が無くなっていたのかもしれない。振り返ってみると、そう感じた。王や三銃士に気を遣わせるとは、自分もまだまだである。終始楽しそうに言い争う二人を眺めつつ、そう思った。久しぶりに、楽しいひと時を過ごした気がする。そんな気がした。
「そろそろ、兵の調練を行おうと思います」
「そうか、邪魔して悪かったな」
「いえ、私としても楽しい時間を過ごさせていただけたの
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