月下に咲く薔薇 7.
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で最も上背の低いクランが、腕組みをし眉間に皺を寄せる。「次元獣共ならいざ知らず、バラの花まで突然消えるとは。この多元世界の不安定度が増している、などという心配はないのか?」
その話を聞いた途端、クロウは脳内でロジャーの言葉を今一度再生した。
力が減衰しているニュータイプ達、漠然としたものながら異様に強いティファの不安。それらを重視しているロジャー達の独自行動についての説明も。
ロックオンがうっかり物を無くした、のではない。
では、どうなったのか。アテナに贈られたというバラは。その先を1人で考える事が怖かった。
「クロウ…?」
やけに怖い顔をしたロックオンが、クロウの両肩を掴んでいる。
「どうしたのだ? クロウまで」
心の扉前に立たれしきりとノックされてしまうと、事実を話したくなってしまうのがクロウだ。それぞれに某かの不安を抱いている2人の顔を順に見つめる。
「後で、少しいいか。この多元世界の事を俺にはどうこう言えないが、その時に俺の話を聞いてくれ」
「後で、でいいのか?」
クランの鋭い問いに、クロウの顔が僅かに引きつる。
「おい…」
ロックオンが更に問いつめようとするところで、背後から「対象発見。…ったく、時間だってのに呑気なもんだぜ」という少年の明るい声がした。言葉面だけなら咎めているようにも聞こえるが、決して責めている訳ではないと口調が語っている。
「10分は過ぎてるな」
クロウが笑うと、デュオが「わかってるなら、ちゃんと来いって」とぼやき、自身の両脇に手をあて反り返るようにクロウを仰ぐ。「気晴らしの外出も兼ねてるんだ。あんまりケチをつけるなよ」
「悪い悪い。すぐに行くから」
「みんなは、もう下に降りてる。今からだと駐車場で合流だ」と、デュオが親指で会議室とは違う方向を指す。
早足を始めた4人の中から、ロックオンがデュオの背に声をかけた。
「扇は来てるのか?」
「ああ。…みんな喜んでるぜ。サンキューな」
「そうか」
安堵してから、ロックオンが改めて上着に袖を通す。クロウも借りたコートの前を閉め、4人は更に小走りになった。
不吉なバラの話は一旦お預けだ。ロックオンの中には未だ凝りとなって残っているのかもしれないが、時間切れならば致し方ない。
続きは、出かけた先で。ロックオンやクランなど、バラの話について興味のある人間と持っている情報を共有できれば万々歳だ。
そう思っている段階で、なるべく内密にと願ったネゴシエイターに背を向け始めている事を悟る。
いいさ、とクロウは居直った。ロジャーもキラも、2本目のバラの存在については知らないのだから。
流石に認めたくなる。ティファが怯える程に恐怖したという監視の目について、クロウはその存在を信じたくなっていた。
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