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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 7.
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もたもたしている間に、第4会議室に行ってるかもな」
「なら、その顔は何だ。もっと楽しそうにしろ」急いでいる筈なのに、クロウではなくクランが尚もロックオンに食らいつく。「折角褒めてやろうと思ったのに」
「無いのさ。俺の手元にあった筈の物が」
「ない? ここでなくしたのか」
 言うまでもなく、ロックオンが出てきた所は今朝までクロウが寝ていた部屋でもある。母艦3隻で昨夜、予告もなく訪れたバトルキャンプの一室だ。元々、ベッドと壁掛け時計以外は何もない部屋の筈なのに、その部屋から一体何が消え失せたというのか。
「クラン」クロウの問いには答えようとせず、ロックオンが小さなクランを見つめるべくやや下を向く。真顔というより苛立ちを隠しきれないその様子は、隻眼になって以来お目にかかった事のないものだった。「ミシェルに贈られたあのバラ。あれと同じ棘付きの赤いバラを受け取ったパイロットは、他にもいたぞ」
「なにィ!?」ツインテールの女戦士が、先程とは比べものにならない程高く、それは高く飛び上がった。「誰だ? それは!?」
「アテナさ。さっきダイグレンの格納庫に扇を捜しに行った時、偶然彼女に会った。話はよく似ている。ミシェルの時と同じく、愛機のコクピットに1輪だけそっと置いてあったんだそうだ」
 顔を真っ赤にし、クランが両手の拳を震わせる。
「何という不実な奴なんだ。男にも女にも花を贈るなど」
「いいんじゃないか、むしろ。それで、ミシェル一筋な女性って線はなくなった訳だし」
 気をきかせ、クロウはクランが見失いかけている点を指摘するが、彼女の表情は一向に晴れない。
「それでも、ミシェルに花を贈られた事実は変わらないんだぞ。誰かがミシェルの事も大事に想っている」
 まぁ、それは事実なのだろうが。困り果てたクロウは、ロックオンの話の続きを待つ。
「で、俺達の部屋から一体何がなくなったって? あんな空っぽの部屋から。ベッドに布団くらいしかないんだぜ」
 最初、ロックオンの口は妙に重かった。
「ああ。だから、そういうものじゃない」
「つまり…?」と、クロウが更に促すものの、胸の中に広がる嫌な予感は既に確信の領域にあった。
「バラさ。俺は制服のままだったから、トレミーで着替えて。その時も、バラは確かにあった。ところがだ。この通路を歩いている間に、なくなっちまった。跡形もなくだ」
「落としたのではないのか?」クランが辺りを見回し始めるが、傘立てやゴミ箱さえ置いていない通路は大変見通しがいい。明るいその縦長な空間に花どころか煙草の吸い殻さえ落ちいてない事は、誰の目にも明らかだった。「…無いな」
「ああ。無いんだ。…あり得ないだろう? 普通」
「それで、何となく俺達の部屋の中も覗いて見たのか」
「我ながら、馬鹿な事をしてるとは思う」
「うーん」3人の中
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