月下に咲く薔薇 7.
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、見ればわかるわよ」
「プロなんだな」
「ええ。時間はかけさせないわ。随分と慌てていたものね」
その言葉が見栄でないと、クロウは目の当たりにする事で思い知る。
ボビーもまた、本物だった。もしフロンティア船団がバジュラなる凶暴な巨大昆虫と遭遇してさえいなければ、彼…いや彼女は、その存在で異性物ではなく映画関係者を圧倒していたのだろうに。
クロウは、着替える側からその上に着る服を差し出され、ショート・コートを掴んだ時には、器用に靴まで履き替えていた。
「カジュアルだけど、やり過ぎない程度に抑えておいたわ。護衛なら、マフラーは厳禁だし。ん〜ん、い・い・お・と・こ♪」
なるほど、言うだけの事はありセンスの方も確かだった。これから行くのは、市街地といっても食品売場になる。しかも、10代の少年少女と共に歩いて回るのだから、求められる服装は自ずと決まってしまう。
軍人として、また美しい男の体型を維持したいと日々の鍛錬を怠らないボビーの服だからこそ、筋肉のついたクロウが借りても何ら問題は起こらない。服は自然とクロウに馴染んだ。
「ありがとうボビー。まともなまま服が返せるよう、ここで祈っていてくれ」
「ええ。いってらっしゃい」
贅肉を削ぎ取った短い見送りの言葉が、そっとクロウの背中を押す。
右手を挙げて応え急ぎボビーの部屋を出ると、偶然にもクランがかわいらしい服に着替え部屋から出てきたところだった。
「クロウ!?」
名を呼ぶなり、クランが20センチ以上垂直に跳ね上がって、戸惑い気味にクロウを凝視する。
何の問題もないと思うのだが、彼女はここで誰かと鉢合わせになる事など欠片程にも考えていなかったのか。顔には、「見たな!?」と激しい文字が殴り書きされている。
「お互い、ぎりぎりになっちまったな」
「わ、私は別に、服選びに時間をかけたのではないぞ」
気丈な彼女らしい見栄からか、尋ねてもいない話を率先して口に出す。
「ああ、わかってる。1人か? ミシェルは?」
「先に行かせた。あいつは支度をすぐに済ませたからな」
「じゃあ、俺達も急ぐか。結構ぎりぎりになってるだろう」
「そうだな」
追求されないと悟って安堵したクランが、先に走り出そうとする。
そのダッシュを突然中断させたのは、部屋から出てきたロックオンだった。彼も私服に着替えており、やや立腹した様子で名残惜しげにドアを閉める。
「どうした? ロックオン」
クロウとクランは、当然扇との話し合いが不調に終わったのではないかと想像してしまう。
「扇に断られたのか?」
そこで問いかけたクランの訊き方は、ストレートそのものだった。時間がないからではない。ゼントラーディとして、彼女が回り道をする会話を好まないからだ。
「いや。扇は乗ってくれたさ。俺達がこうして
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