月下に咲く薔薇 7.
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は、いつもの事。その上からいきなり羽織っているやはり一張羅の軍用コートは、屋内対策として前を開け放っている。
これがクロウの私服であり、戦闘用をも兼ねている。だからといって、本当にそのままの服装で外出するつもりはなかった。
「クロウは目立つわよ。背が高いから」
琉菜が言わんとしているのは、外出メンバー内の比較ではなく、日本の市街地で目立つという意味だ。確かに、それは上手くない。
「…また、オズマ少佐に服を借りるか」
「急いでください。集合の時間まで、あと15分しかありません」
グランナイツのエィナが高速の服選びを促すので、「女の子じゃないんだ。10分、いや5分で戻る」と大口を叩いて会議室を抜け出した。
いつも通りなら、オズマに当てがわれている部屋はカナリア軍医の隣なのだが。
しかし、オズマを見つけるより早く、何とボビーに発見された。
「あ〜ら、クロウちゃん。そんなに急いでどうしたの?」
「これから出かけるのさ。買い出し隊の護衛で市街地まで。それで、オズマ少佐に服を借りられたらって…」
「ま〜〜ぁ!!」
説明の最後尾は、ボビーの歓声でかき消された。両手で自分の顔を包み、小さな尻を小刻みに振りながら何やら喜びを表現している。紛れもなく仕種は少女のそれなのだが、細身とはいえ長身の大人、しかも男がやると、見ている者は得も言われぬ気分になってしまう。
「オズマなら、今いないわよ。でも安心して。クロウちゃんの体型なら、私の服が着られる筈だから」
「えーっ!?」ボビーの私服と聞いた途端、クロウの背筋を悪寒が駆け抜けた。
その態度がお気に召さなかったのか、「なぁに? 私、そんなに服のセンス悪くないわよ」と、ボビーが凄まじく口端を下げる。
「い、いや。フロンティア船団のカリスマ・メイクアップ・アーティストから服を借りるのは、ちょっと恐れ多くて」まさか男色家の服は着たくない、と率直に言う事もできず、クロウは相手を持ち上げつつやんわりと断る。「もし市街地で何かあったら、折角の服が傷物になるかもしれないし」
「構わないわよ。仲間や民間人を守って服がダメになるなら、それは立派な勲章でしょ? そんなに危ない事になりそうなら、余計私の服を貸してあげたくなっちゃう」
「ボビー…」
流石は、民間軍事プロバイダーであるSMSの人間。しかも、マクロスクォーターの操舵手としてジェフリー艦長と小隊長オズマ少佐の信頼も厚いだけの事はある。
戦士という人種を理解している有り難さに、クロウの気も緩んだ。先程の警戒心を申し訳なく思う。
「クロウちゃんはなかなかの男前だから、この季節にぴったりの、でも動きやすくてステキな服を選んであげる。きっと、街で女の子が振り返るわよ」
「ありがとう。俺のサイズは…」
「あーら、私を誰だと思ってるの? そんなの
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