月下に咲く薔薇 7.
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生憎、クロウ達ZEXISのオリジナル・メンバーは、今までティファの感知能力の恩恵を受けた事がなかった。精度が極端に落ちている為で、その分、彼女の能力について懐疑的な部分が多少なりともある。
だが、ZEUTHは違う。彼等が過去にティファから実に具体的な助言を幾度も受けていた事は想像に難くなく、感知能力が下がっている筈の現在に於いてもその信頼は余り揺らいでいない。今のZEXISとZEUTHには、その辺りに多少のずれが存在していた。
何事もなく打ち合わせが終わった上、ロジャーも誤差であるとの可能性に触れたものの、クロウの中にはしっくりと来ないものが残っている。正体は、伝染した不安。ロジャーとキラの中に現存している不安に他ならない。
ZEUTHはともかく、その件について知っているZEXISは今自分1人という事になる。自らその重さを判断する事は避け、言うべきか? 大山達に。
いや。誰の視線がバトルキャンプを監視していようと、策は講じてあるのだ。シンフォニーの存在も、皆が強く意識している。今のZEXISは優秀だ。黙して欲しいというロジャーの希望を汲んでおこう。クロウは1人、静かに決断する。
第4会議室に再び集まり始めた者達は、それぞれ街に溶け込む為の私服に袖を通していた。キラや斗牙達ばかりか、赤木達ダイ・ガードのパイロット達も背広を脱ぎ厚手のセーターの上から冬物のコートを羽織っている。
バトルキャンプ内の設定温度は民間に比べ少々低めだが、その中にいるとはいえセーターにコートでは重ね着が過ぎるというものだ。
「出掛ける時間にはまだ早いか」案の定、赤木がコートを一旦脱ぎ楽になると、斗牙が「赤木さんの私服姿って初めて見ました」と微笑みながら近づいて来る。
「いや。あの背広は制服ってんじゃないんだけどな。ダイ・ガード搭乗時には別のものがあるし」
「えーっ!? 企業戦士の制服じゃないの?」ミヅキに痛いところを突かれれば、更にルナマリアが追い打ちをかける。
「赤木さんって、会社用のネクタイ1本しか下ろしてないでしょ。だから、みんなが制服だと思うのよ」
「うぇっ!!」全身を硬直させ、赤木が小声で「みんな、結構チェック厳しいんだな」と零した。
「ほら、言わんこっちゃない」以前から警告していた青山が、左腕にショート・コートを掛けやや大袈裟に呆れ顔をする。「着替えないお前は、着替えられないクロウと一緒に見られてるんだ」
「え…?」自分への思わぬ飛び火に、クロウはまじまじと青山を見つめる。「おいおい。俺だって、腹が千切れかけた時の見舞いで、シャツの種類は随分と増えたんだぜ」
「なら、着替えて来いよ。お前、そのまま出掛けるつもりなのか?」
その指摘で、クロウは初めて自分が外出の為に何の備えもしていないのだと気がついた。白いシャツにベストの組み合わせ
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