月下に咲く薔薇 7.
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近、それも3日以内という近距離でミシェルが何かをやらかしたのだ。
「どうやら誰かの目には、私があの男と同列に映っているらしいな」
「いいじゃないか。お互い不名誉って事ぁないだろう? 誰が見たって、ミシェルは本物だ。ZEXISじゃ最年少のスナイパーだが、未成年って側面は侮るところじゃない」
「勿論わかってはいる!」赤面しながら激高するアテナが、ロックオンににじり寄った。「問題なのは…、問題なのは…」
素行、女癖、そういった言葉を、チラム軍人は器用に喉の奥へと押し込んでいる。
「言わなくていい。誰だってちゃんと見てるさ。アテナ・ヘンダーソンが、どう自制しどう戦ってきたのかは」
穏やかに話しかけると、彼女の興奮はすぐに収まった。
拒絶する素振りに目が行きがちだが、一応ミシェルを認めてはいるように思う。おそらく接しづらいのだ。ミシェルとではなく、男というものと。
「すまない」興奮した様子について、アテナが軽く頭を垂れる。「企画の事、成功するように祈っている」
「ああ。ありがとう」
背筋を伸ばした勝ち気な姿勢のまま、一定のリズムで靴音を立て長髪の女性パイロットが去って行った。バラに劣らぬ艶やかさに視線を奪われ、数人の男達が後ろ姿を追う。
そして、アテナに贈られた筈のバラはロックオンに委ねられた。
「うっかり引き取ったはいいが。…何がしたいんだ? 俺は」
自問し、クランとミシェルにでも知らせたかったのかと苦しい答えを導き出す。
「ま、妥当な線を狙うのが一番」
携帯端末で時刻を確認してから、自室に向かう前にするべき事があると、ロックオンはトレミーを目指す。
* * *
一旦空き室になった第4会議室に、ぽつりぽつりと人の姿が戻り始めた。21世紀警備保障の大杉課長がジェフリー艦長やスメラギ、大塚長官の外出許可を取りつけたらしく、谷川と中原の手には合わせて数台分と思われる車のキーが握られている。
ネゴシエイターは、未だ現れない。しかしクロウの耳には、ロジャー特有の堅い口調が強く絡みついてなかなか離れなかった。あのやりとりは10分以上も前に行われたというのに、まるでつい先程聞いたばかりという鮮明さで脳が全てを再現する。
誰に話しても構わない。ロジャーからはそう言われたし、あの男がクロウの良心に訴えかけた理由も理解できる。クロウは、改めて頭を働かせた。
バトルキャンプが様々な組織によって監視されている可能性と外出のリスクは、元々高い。その点については、既に課長の大杉やロジャーが織り込んでいる筈なのだ。当然、無策ではないのだから無駄に不安を煽る必要はない、との判断は成り立つように思う。
問題なのは、その策を承知の上で尚、ロジャー達に行動を始めさせた程の何か。そういう不気味なものの存在だ。
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