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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 7.
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「…このバラがどうした?」
 表情に出せば、それは人に伝わる。喜怒哀楽、痛み、何かを追っている者の関心の度合いまでもを。たかが1本のバラにガンダムマイスターが顔面蒼白になっている様子を不審に思わないZEXISはいない。
 ロックオンは、自らがアテナを誘導してしまったのだと悟った。
 彼女は花を差し出していたが、スナイパーの動揺を感じ取り僅かに手首を引いて躊躇を示す。最早、何の説明もせずバラを受け取る事ができる雰囲気にはなかった。
 今朝のミシェルとクランを思い出しつつ、繰り返し自らに言い聞かせる。何という事はない。見目麗しいバラが、1輪は色男に、もう1輪は女性軍人に贈られたというだけの話ではないか。
「そんな真面目な顔をするなって」努めて平静を装い、ロックオンは目線でアテナの手元を指した。「今朝、その花と同じものが愛機に残されていたって言う奴に会ったんだ」
「他にも? 私だけではないのか」
 チラム軍人の目許が俄に憂いを帯びる。と同時に安堵の様子が浮上し、彼女の頬を吊り上げた。
 どうやら、アテナもアテナで武装解除が行われていない贈り物に、相手の心中を量りあぐねていたようだ。桂やピエール達の筈はないとの察しはついている。気の回る桂達程、この有様の花を女性に贈る愚から遠い男はいないのだから。
 微妙な関係の父親から贈られれば、棘付きのメッセージに首を捻りたくもなるだろう。安堵の根は、桂からのものではないという部分。その一点か。
「ああ」時間が押している事を承知の上で、ロックオンはもう少し話してゆこうと考える。「そのバラは贈られた奴の希望で、今基地の第4会議室に飾ってる。そこは、俺達励まし隊の拠点なんだ」
「励まし隊?」
 咄嗟につけたその名前でも、アテナは言わんとする事を理解してくれた。
 合点のいった東洋系の美女が、2本の指で摘んでいた花をロックオンにすっと差し出す。
「例の企画か。ならば、これだけの華やかさは幾らかの慰めにはなるだろう。私はいらないから、この花も持って行くといい」
「わかった」花を受け取って、一度アテナの眼前に翳す。「企画への協力、感謝する!」
 ようやく彼女に、輝く笑みが戻って来た。
「ところで、花を贈られたもう1人というのは誰なんだ?」
 ロックオンは、「ああ、ミシェルだ」と即答する。「今朝、あいつが乗るメサイアのコクピットに置いてあったそうだ」
「ミシェルの…」少年の名を耳にした途端、アテナの眉間に深い縦皺が一筋刻まれた。
 明かしてしまったロックオンの心中は、実に複雑だ。彼女の思考は、謎の贈り主から同じ物が贈られた他の仲間へと関心が移っている。話の流れなのだから、それ自体に何ら問題はない。
 ただ、素行に多少の問題を含んでいようと、ZEXISの仲間にこの表情はないと思う。
 おそらくは極最
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