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《sword art online》 ~クリスタルソウル~
暗雲
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一太刀浴びせ、返す刀で首を飛ばす。あっというまに一体屠った。
僕は、実力で未だイブに遠く及ばない。いくらレベルを上げて、戦闘の経験をつんでも、常にイヴはその先を行ってしまう。攻略組の中でも、彼女のプレイヤースキルは頭一つ分飛びぬけていた。しかし、だからこそ、必ず追いついてみせるのだ。
僕はそうすることで、弱い自分を変えてくれた彼女に恩返しができるような気がしていた。イヴがいなければ、ここまで前向きになれなかったし、そもそも生きてすらいない。なのに、いつまでたっても彼女より弱いままだったら、それこそ失望されるし、格好悪いってもんじゃないか?
僕は腰を落とし、バスターソードを上段に構えた。残ったもう一匹が、彼女に襲い掛かる気配を見せたからだ。
規定モーションを拾ったシステムが、僕の体を自動的にアシストする。
爆発的な加速、青いライトエフェクトを纏う刀身、正確無比な動きーーすなわち、ソードスキルを発動させた僕は、ゴブリンとの間合いを一瞬にして詰めた。
奴が気づいたようだ。瞬時に防御しようとするが、その時には既にバスターソードの間合いに捉えている。右上から走る斬撃が、ゴブリンを切り飛ばし、背後の木に叩き付けた。単発のソードスキル「アバランシュ」を放った僕にも大きな隙が生まれる。急所を外してしまったせいで、敵はまだ倒れていない。このまま追撃に移れるか怪しいタイミングだが、今回に至ってはそんな心配は必要ない。頼もしい相棒がそばに控えているからだ。
僕が敵を吹き飛ばしたのとほぼ同時にイヴがフォローに回る。閃いた剣尖がゴブリンを手際よく串刺しにし、HPを削り切った。
絶叫。ポリゴン片が爆散し、輝きながら宙に舞う。戦闘終了を告げる効果音と、表示されるシステムウィンドウ。YOU ARE WIN! 僕たちの勝利だ。
ほっと息をつく。入手した経験値とアイテムに軽く目を通し、バスターソードをしまった。戦いで極限まで高まった緊張感が、警戒レベルまでシフトダウンするのを感じる。
「おつかれ」
「ナオも」
拳と拳をこつん、とぶつけ合う。彼女とペアを組んでから恒例の合図だ。しかし、恒例とは言っても次も同じようにできる保証はない。ちょっとした判断ミスで全てを失う。ここはそういう場所だった。だから二人とも生き残って、触れ合うことのできた時は、嬉しさを感じずにはいられないのだ。
イヴの顔からも張り詰めた感じが多少抜けて、いつもの柔らかさが戻ってくる。
「ちょっと攻撃当たってたね。回復は大丈夫?」
「うん。この程度で一々ポーション使ってられないでしょ」
「そんなこと言って。何かあったらフォローするの私なんだから」
「ノルマはあとちょっとだし、一撃くらう前に全部片付けられるよ」
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