1部分:第一章
[2/3]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
に出したのは彼等についてだった。
「あの者達はどうか」
「三人共出ています」
「戦争だったか」
「はい、スペインとの」
今度はこれであった。
「出ておりますので。残念ながら」
「そうか。アトスもポルトスもアラミスもだな」
「申し訳ありませんが」
「では。彼しかいないか」
王はここでまた言った。
「彼しかな」
「あの者ですか」
「うむ。どうだ」
あらためてリシュリューに問う。
「あの者ならな」
「そうですな」
リシュリューは王の問いに対してまずは一息置いてから答えたのだった。
「あの者しかおりますまい」
「やはりそう思うか」
「はい。ロシュフォールも三銃士がいない今あの者しかおりませぬ」
今度はこう述べたのであった。
「ここは」
「実はだな」
王はここで少し危惧する顔を見せてきた。
「あの者だけで行かせるのは少し危険かとも思うのだが」
「それは私も思います」
これに関してはリシュリューも同じ考えであった。このことを隠しもしない。
「いささか血気にはやりますので」
「そうだ。まだ若い」
王はそこを危惧していたのだった。どうやら二人が考えているその者はいささか軽率か若しくは血気盛んであるらしい。やり取りからそれがわかる。
「それがどうにもな」
「ですが。腕は立ちますので」
「伊達に三銃士と初対面で決闘を挑んだわけではないか」
「それも三人に一日一度にです」
リシュリューはここで苦笑いになった。細長く鎌髭を持ち一歩間違えればかなり意地の悪そうな顔であるが何故か苦笑いも合う顔であった。
「普通はしません」
「幾ら知らなかったとはいえな。一度に三人に決闘を挑むなどと」
「ですが腕が立つのは事実」
「うむ」
「ですからここはあの者にしましょう」
「よし」
リシュリューの言葉をここまで受けたうえで王は決断を下したのであった。
「あの者にしよう。それではな」
「はっ」
こうして話が決まった。その夜パリの街に茶の大きな馬を駆って街を進む一人の若者がいた。夜の闇の中に馬の蹄の音が響き月明かりに青い上着と白いマントを着て茶色の髪を持つ端整な若者がその馬に乗っていた。彼は馬を引く従者に対して声をかけてきた。
「なあジャン」
「何ですか、御主人様」
「陛下は私にこの仕事を与えて下さった」
「はい」
「やはり名誉なことだな」
「名誉なのは名誉ですね」
感動しているような若者に対して彼よりもまだ若いこの従者はかなり覚めた言葉を出して応えた。くすんだ金髪と黒い目を持つ賢そうな従者である。
「それは確かに」
「何か面白くなさそうだね」
「当たり前ですよ」
ジャンは不機嫌そのものの声で若者に言葉を返した。
「話は御存知ですよね」
「勿論だ」
若者の言
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ