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幽霊と弥三郎
4部分:第四章
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ますね」
「無論じゃ」
 彼は答えた。
「話しておかねばなるまい」
「そうですね」 
 若者もそれに頷いた。確かにそうすればいいと思った。
「まあ問題がないわけでもない」
「問題とは」
「上様がな。この話を信じて下さるかどうか」
 弥三郎はそう言って顔を顰めさせた。
「それが問題じゃ」
「それがありましたか」
「そうなのじゃ」
 信長は今もよく知られているように現実的な性格である。目に見えないものは信じない性格だ。その彼がこんな話を信じるかどうかというと甚だ疑問であるのだ。だが弥三郎はそれを言おうと決めていた。
「じゃが言うしかあるまいな」
「そうするしかありませんね」
 若者もそれに同意した。こうして彼は信長にこのことを報告することにした。
 信長は岐阜の城にいた。そこで弥三郎の話を聞くのであった。
「以上でございます」
 主の間で彼は報告を終えた。そして頭を垂れていた。信長はそれを頷きもせず聞いていた。だが聞き終えてからその鋭利で整った顔を動かしてきた。
「その話はじゃな」
「はい」
「まことであるな」
「既に首も届いておりますが」
「ふむ」
 信長はそれを聞いて袖の中で腕を組んだ。それからまた述べた。
「ではまことであるのだな」
「それがしとて最初は信じられませんでした」
 弥三郎自身もそう述べた。
「ですが実際に見ましたので」
「目で見たのか」
 信長はそこを聞いてきた。
「その方の目で」
「その通りでございます」
「左様か」
 それを聞いてまた黙ってしまった。その顔が考える顔になっていた。
「さすればまことであろう」
「はい」
「わしはこうしたことは信じぬのじゃがな」
 一応はそう前置きした。信長はそうした話や迷信の類は一切信じない男であるのだ。これはこの時代からよく知られていることであった。
「じゃがその方が見たというのならまことであろう」
「では話を残しておきます」
「そしてじゃ」
 だが信長はここでまた言ってきた。
「何でしょうか」
「その怨みを晴らした女房のことじゃ」
「逆さまの女のことですな」
「左様。その女、さぞかし無念であったじゃろう」
 実は信長は女に対してかなり寛容な男であった。夫羽柴秀吉の浮気癖に怒るねねに対して彼女を褒め称えつつも嗜める手紙を書いていたりもする。決して苛烈なだけの男ではなかった。そうした繊細な部分も併せ持っている男なのである。
「じゃがよく無念を晴らした」
 信長は言った。
「厚く供養するようにな。村の者に申し伝えておけ」
「わかりました」
「わしの名でな」
 信長はこうまで言い含めた。
「よいな」
「はい、それでは」
「それにしても世の中とはわからぬものじゃ」
 信長は話を終えてもそう思うこと至
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