2部分:第二章
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弥三郎は話を受けたうえでまた女に問うた。
「わしがその亭主と妾を成敗すればよいのか」
「いえ」
だが女はそうではないと言ってきた。
「まずはですね」
「うむ」
「川を渡らなければ話にならないのです」
「川をか」
「はい、何分亭主も妾も向こうにおりますので」
「ああ、そうじゃったな」
弥三郎はその話を聞いて頷いた。先程からの話ではそうなる。言われてそれを思い出した。
「それではまずは川を渡るか」
「はい、渡し守りに会いに行くぞ」
「畏まりました」
こうして弥三郎は歩いて、女は逆さまになったまま宙を浮かんで渡し守りの家に向かう。そして扉を叩いて呼ぶとその渡し守りが眠い目をこすって出て来た。
「はい。川ですか?」
「そうじゃ。少し頼みたいのだが」
「はあ。それで一体どなたを」
「わしとな」
「弥三郎様と」
この二人は顔見知りである。何度も行き来しているうちにそうなったのである。
「この女じゃ」
「女・・・・・・」
渡し守りはそれを受けて弥三郎の後ろに目をやった。そしてその青白く恐ろしい形相が下から見据えているのを見てあっという間に気を失ってその場に倒れてしまった。
「どうしたのでしょう」
「御主の姿を見たせいじゃな」
彼にはすぐに合点がいった。それで女に対して述べた。
「やはり私が幽霊だからですか」
「まあ無理もないな」
正直こう述べるしかなかった。
「幽霊でさえ恐ろしいというのにそうして逆さまになっていればな」
「そうなりますか」
「それはわかるじゃろう」
女に顔を向けて言った。
「御主もついこの前まで生きておったのじゃからな」
「ええ、まあ」
女は弥三郎を見上げてしょげた声で答えた。
「いささか残念ですが」
「仕方のないことじゃ。しかし」
彼はここで気絶してしまった渡し守りを見た。
「これではとても船を操ることはできぬな」
「どう致しましょうか」
「何、困ることはない」
だが弥三郎はそう言って女を安心させてきた。肝心の渡し守りが倒れてしまったというのに彼は落ち着いた様子であった。
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