1部分:第一章
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「そこの庄屋の女房だったのですが」
「何かあったのか」
「はい、亭主には妾がおりまして」
声がさらに苦しいものになってきていた。その苦しさはどうやら心からくるものであろうことは彼にもわかった。
「その妾と計って私を殺したのでございます」
「ふむ」
弥三郎はそれを聞いて頷いた。
「酷い話であるな」
「お侍様もそう思われますか」
「我が国のことは知っておろう」
この場合は織田信長の領地という意味である。信長は領民にとってはいい殿様であった。政治に細心の注意を払い公平で確実な政治をすることで知られていた。実は信長という男は戦争よりも政治の方に才能がある男だったのである。
彼の政治は一言で言うと悪人には厳しい政治であった。罪人は何処までも追い詰め処罰する。その処刑は実に惨たらしいのが信長らしいと言えばらしかった。そういう政治だったので信長の領地では治安が実によかったのだ。
「そうした輩は成敗する」
彼もまたそれをよくわかっていた。だから言葉が厳しいものになっていた。
「その様なこと、見過ごしには出来ぬな」
若者とのことはもう頭の片隅に追いやっていた。それどころではないのがはっきりとわかっていた。
「してじゃ」
「はい」
「御主は幽霊であるな」
「左様でございます」
女は答えた。
「左様か、やはり」
弥三郎はそれを聞いてまずは頷いた。
「しかしじゃ」
「何でしょうか」
「さっきから妙に思っていたのじゃが」
「はい」
女は弥三郎の言葉に応える。弥三郎はそれを受けてさらに言う。
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