三十六話:デートと日常
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「んな!? リヒターッ!」
このままでは逃げられないと判断した犯人がナイフを取り出し勢いそのままに突き出して来る。
これがジークであれば難なく躱せていただろう。だが、リヒターにその様な技術は無い。
目を見開き迫りくる凶器を眺める事しか出来ない。
ジークもこの距離からでは間に合わない。
「……死にたくないな」
「リヒターーッ!!」
どこか諦めにも似た本心からの小さな呟き。
それを拾えた者はその場には誰一人としていなかった。
ジークの絶叫と共に真っ赤な噴水が噴き上がる。
惨劇に一瞬目を瞑ってしまうジークだったがすぐに振るえる瞼をこじ開け現状を確認する。
喉を切り裂かれ血塗れで倒れる一人とそれを悠然と眺める一人。
その光景にジークは言葉が出ずに茫然と見つめる事しか出来なかった。
なぜならナイフを持っていたのは―――リヒターだったのだから。
「ふん、歯ごたえの無い奴め。もう少し上手く―――踊ったらどうだ」
「リ、リヒター?」
慣れた手つきで血を払う想い人の姿にジークは何が起こっているか分からなかった。
しかし、一つだけ理解できたことがあった。
あれは自分の知る―――リヒターではないと。
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