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《sword art online》 ~クリスタルソウル~
変化
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ログアウトは不可、ゲームオーバーは死。
 ナーヴギアを頭から取り外そうとしても殺す、と彼は言った。救助が一向に来ないのもきっとそのせいだろう。

 なぜ? というプレイヤー達の疑問に対し、茅場晶彦は明確な答えを言わなかった。ただ、「この現状こそが、私の目的だ」と語った彼の満足気な声は今でも耳に残っている。

 結論。
 現実への帰還は、ゲームをクリアすることでしか成し得ない。未だ僕たちは仮想空間に捕らわれ続けている。

 ようやく自分たちの置かれた状況を理解した時、僕たちを混乱が支配した。
 SAOの舞台であるアインクラッド。それは直径十キロ近い大地を百層も連ねた、信じられないほど巨大な浮遊城だった。ゲームのクリアとはすなわち、このアインクラッドを全て踏破し、第百層の最終ボスを倒すことを意味する。当然、道中には九十九のフロアボスと、無数のモンスターが待ち構えており、その全てがプレイヤーを殺す力を持っているというわけだ。ゲームクリアにはどれほどの時間がかかるか、そもそもクリアできるのかどうかすら疑問だった。

 二千人。
 焦りから無謀なゲーム攻略に挑み、たった一ヶ月でこれだけのプレイヤーが死んだ。プレイヤー全体の二割に相当する数だった。にも関わらず、その時点で第一層のフロアボスすら倒すことができていなかったのだ。

 ゲームクリアは不可能。自分たちは、仮想空間で死ぬしかない。

 一時、暗い絶望感が全プレイヤーを覆い尽くした。

 しかし、時間とは恐ろしいもので、気が付けば僕たちはそんな地獄にも適応していた。
 一瞬の判断ミスが死につながるギリギリの戦闘も、幾度となく繰り返せばやがて日常となる。プレイヤーの死亡率は急激に減少した。攻略のペースも徐々にだが上がってきている。皆が皆、それぞれのやり方でこの世界を受け入れようとしているのだ。

「ナオー、まさかまた寝てるんじゃないよねー」

「今行く」

 せっかちなイヴに返事をし、そっと窓を閉じる。
 絶望し、宿に閉じこもって震えていたのは昔の事。今の僕は、ここが現実か仮想空間かという問題よりも、彼女の機嫌を悪くしてしまったらどうしようとか、そんな些細なことを心の底から心配している。それがいいことなのか、悪いことなのかは分からない。ただ確かな事は、僕はイヴの笑顔を幻として割り切ることはできず、仮想空間で共有できる時間を”楽しい”とすら感じ始めている。

 もはやこの世界は、僕にとってただのデスゲームではなくなってきていた。


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