暁 〜小説投稿サイト〜
7thDragoN 2020 ~AnotheR StoryS~
CapteR:0 目醒めの刻
序章:a
−新宿地下街−2020−April−3−13:28−
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けでない。その場にあるものが上下左右に動き、撥ね回る。私達は咄嗟にテーブルの下に潜り込み、テーブルの足に必死にしがみついた。床と足が固定されているテーブルであったが、それでも足がしなっていた。人々の悲鳴が地下街を木霊している。私達はあまりの恐怖に口すら利けず、ただ揺れが収まるのを待った。2,3分経っただろうか。辺りの様子を確認する余裕が出来た。
「何、これ・・・。」
この言葉を口にしたのが私だったのか、雪絵だったのかは分からない。ただ一つ分かる事があるとすれば、このカフェの中で私達以外にこの言葉を聞いていたのは私達以外に誰も居ないという事だろう。
洒落たカップや飾りのついたスプーンやフォークは辺り一面に散乱し、観葉植物が植えてあった鉢は中の土をぶちまけて力尽きたように倒れていた。
私達にケーキを運んできてくれたお姉さんは、運悪く何処かに頭を打ち付けたらしく、血を流して横たわっていた。
テーブルで仕事の打ち合わせをしていたサラリーマン達が、居た場所には屋根が崩れ落ちていて、彼らの姿を確認することは出来ない。
このカフェのマスターは多分、厨房で横たわっている大きな銀色の冷蔵庫の下だろう。確認する気にもなれない。
「どうしたの・・・。ねぇ、何があったの・・・。」
雪絵はテーブルの下からまだ出てきておらず、床を叩いてすすり泣いている。
「雪絵、床、叩くのやめよ。硝子が・・・ガラスが散らばってるから、怪我するよ・・・。」
テーブルの下から雪絵の手を引っ張り、立ち上がらせる。引っ張り上げた手には、生温い、ぬめった感触があった。
案の定、雪絵の右手はサックリと硝子で裂けていた。さっき雪絵が買った服をビニールから取り出し、細長く破る。それを雪絵の右手に巻き付けて、それを強く縛り上げる。
「ねぇ・・・。私達死んじゃうのかな・・・。」
雪絵は、私が服を巻き付けた右手を眺めながら呟いた。
「・・・。馬鹿な事言わないでよ。私はともかく雪絵が、地震ごときで死ぬなんて思えないわ。」
「もうっ・・・。何それっ、まるで私はっ、か弱い系女子なんだからっ・・・。」
そう言い、彼女は俯いて肩を震わせた。
―――私だってか弱いんだよ
ずるいじゃないか―――
そんな事、思っても口には出さない。
「とりあえずさ、地上に出ようよ。出るまでに他にいる人に合流できるだろうし。」
そう言って雪絵の肩をさすりながら、私達はカフェの扉だった木の枠をくぐり抜ける。
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