巻ノ十四 大坂その十一
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「それがしも何とかわかるようになりましたが」
「そういえば安土に見慣れる書もあったな」
「あれば南蛮の書でして」
「南蛮の文字で書かれておったのじゃな」
「そうだったのです」
筧は幸村に確かな声で話した。
「それがし言葉は何とかわかりますが」
「喋ることはか」
「そちらは無理です」
「そうか、しかし南蛮の言葉がわかるなら」
それならというのだ。
「頼りにさせてもらう」
「では」
筧は幸村に応えた、そしてだった。
老人がだ、一行に言った。
「ではまた」
「うむ、大坂に来た時はな」
「また楽しみましょう」
「それではな」
幸村が応えてだ、そしてだった。
一行は老人と別れて大坂を少し見回ってだった、大坂を出て南に向かうのだった。幸村はこの時に家臣達にまた言った。
「都、大坂と回り堺となるが」
「はい、こうして見回りますと」
「こちらは違いますな」
「西国は」
「実に」
「うむ、栄え方が違う」
それこそというのだ。
「何かとな」
「ですな、しかし」
「それでもですな」
「これは有り難い学問ですな」
「これもまた」
「うむ、全くじゃ」
こう答えたのである。
「これから我等の役に立つであろうな」
「そうですな、こうして西国を回ったことも」
「それもですな」
「実に、ですな」
「今後に役立つ」
「そうなっていきますな」
「うむ、見るのも学問もうち」
幸村は確かな声で言った。
「これが役に立つであろう」
「特に」
ここでだ、こう言った幸村だった。
「政においてな」
「上田においてですか」
「政をするにあたって」
「こうして西国を見たことが役に立つ」
「そうなっていきますな」
「上田は都や大坂とは違う」
このこともだ、幸村はわかっていた。そのうえでの言葉である。
「人も少なくここまで便もよくない」
「信濃全てを合わせても」
それでもとだ、穴山が応えてきた。
「大坂にようやくでしょうか」
「賑わいで勝てるかどうか」
「そこまで違うでしょうか」
「そうじゃな、諏訪と比べてもな」
幸村と穴山が会った場所だ。
「全く違う」
「ですな、そう思いますと信濃は田舎ですか」
「田舎も田舎じゃ、特に上田はな」
真田のその領地はというのだ。
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