第十六話 交わる剣と身体
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あった二人の反論と、アスナを殴ったことによって送られてくる周囲の殺意をまとめて無視してリュウヤはアスナのいた位置に立った。
「いいか、とりあえずさっきの策は無しだ。他の策を練る」
「ふ、ふざけないで!それを決めるのはわたしーーー」
「はい、お静かに」
「ひゃう!?」
リュウヤがしたのはひざカックン。不意を突かれたアスナは、立ち上がったひざをまた地につけてしまう。
「で、どうせ何の案が出ても揉めるんだ。ならそれをどう解決するか。ここにいるヤツなら、分かんだろ?」
ここにいるプレイヤーたちは皆《攻略組》だ。剣の実力がモノを言うこの世界において、それを証明してきたものが集う集団。
つまりリュウヤが言いたいこととは、
「《決闘》して勝ったやつの言い分に従えってこった」
再度どよめきが場を包み始める。
ある者は面白そうだと笑い、ある者は面倒だとため息をつく。
「そこで、だ。どうせならこの二人が《決闘》した方が面白くないか?」
な?と語りかけるリュウヤの目線の先にいるのは未だ頭を擦っているキリトとひざカックンから立ち直ったアスナ。
「この二人のどっちかが勝った方の案に従う。それで文句あるか?」
一瞬の静寂。
リュウヤがニヤリと笑みを刻んだその刹那。
ウオオオォォォォ!!!!
爆発するように興奮の雄叫びが空気を震わせる。仕方ないと言えるこの興奮。娯楽に飢えたこの世界で、しかも《閃光》と《黒の剣士》の一騎打ちが見られるとなれば盛り上がらないはずがなかった。
「お前さんらも、それでいいだろ?」
当の本人たちに視線を向けると、キリトは不敵な笑みを見せる。
アスナは不承不承といった体で「いいでしょう」と言った。
だがしかしーーー
(ほぉ〜ん、なんか嬉しそうじゃん)
心情を機微に感じ取れるリュウヤから見たアスナは期待を寄せているようにも見えた。
それは、かつてタッグを組んでいたからなのか、はたまた強敵を相手にするからなのか、それとも別の感情があるのか……。
(ま、今はいっか)
自分のやることは他にあるのだから。
キリトとアスナを先頭にゾロゾロと広い空き地へと移動する攻略組のメンバーを傍目に、リュウヤは思考の闇へと深く潜っていった。
ザクザクと土を踏み鳴らし、剣戟が聞こえる場所へリュウヤは向かう。
人混みをかき分け、鋭い音楽を奏でる二人の顔を見たのは勝負が決まる数瞬前だった。
互いに最後の力を振り絞る決意を決めた顔。
距離を保ったのはほんの一瞬、キリトが前に出た。
迎えうつアスナは、しかし完全なスキを作ってしまう。それはキリトの不可解ながら本気を感じさせる『二本目の剣』を抜く動作のせいだ。
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