第十六話 交わる剣と身体
[1/7]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
二〇二四年三月六日
第五十六層《パニ》
そこに集まる人々は、岩でできたテーブルを囲み、議論を交わしていた。
しかし全員にたいして発言するものではなく、ただザワザワと騒めいているのみ。その中には口を引き結び黙っているプレイヤーもいる。
攻略組によるフィールドボス攻略会議。
攻略組に名を連ねるギルド及びソロプレイヤーたちが一堂に会する会議だ。
フィールドボスを見つけたものの、その厄介さから立ち止まってしまっている。加えて打開策も出てこない。
そこに切り込みを入れたのは、テーブル前に立つ、赤と白を基調とした制服を身に包み、腰まで流麗に伸びた栗色の髪を持つ美少女。
バンッ、と大きな音を立ててテーブルを叩き、全員の視線を集めた。
「フィールドボスを村の中へ誘い込みます」
《血盟騎士団》副団長の《閃光》アスナ。
全員にどよめきが走るのを気にせず彼女は続けた。
「誘い込んだ所でNPCを囮にし、ボスが殺しに夢中になっている間に攻撃。殲滅します」
その提案に誰かが何かを言う前に、黒ずくめの男が割って入った。
「ちょっと待ってくれ、それじゃあ村の人々はどうなる!彼らはーーー」
「生きている、とでも?」
「ーーーッ!」
アスナの鋭い剣幕に《黒の剣士》キリトが小さく息を飲んだ。
「あれは単なるオブジェクトです。岩や木と同じ。たとえ殺されようと、またリポップするのだから」
「……俺はその考えには従えない。彼らは一人の人間として扱うべきだ」
「今回の作戦はわたし、《血盟騎士団》副団長のアスナが指揮を執ることになっています。わたしの言うことには従ってもらいます」
アスナの言い分にキリトが一瞬言い留まるが、それで終わることもなく二人の議論がヒートアップしていく。
これは絶対に終わることのない議論だ。なぜなら二人が言っているのは、突き詰めればNPCに人権があるのかないのかという、お偉いさん方がいくら話し合っても結論が出ない議題だ。
そんなものを、ただのゲーマーたる彼らが言い争ったところで、平行線のまま無意味に時間が過ぎるだけである。
時と場所さえ選べば議論を交わすことは有意義なんだが、と思っていたのは、
「いい加減にせい、頭冷やせっ」
ゴチーン、とキリトとアスナの頭を豪快に殴ったパーカー姿の男、リュウヤだった。
「「〜〜〜っ!」」
二人が頭を抱えてうずくまり悶絶しているのを見てリュウヤは呆れながら言った。
「あのなぁ、そんな話してる場合じゃないだろ。痴話ゲンカは他所でやんなさい」
「「痴話ゲンカじゃない!」
「はいはい分かった分かった……。そんなもんどうでもいいから話進めるぞ」
息の
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ