―真実を語る者の謎―
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『……矢……遊矢……!』
暑くて寒くて痛くて苦しい異世界。自分の身体がどうなっているかも知れない、まさにこれが『地獄』と呼ばれるような場所。そこに倒れ伏していた俺の耳に、その声が響きわたっていた。
『今か……お前をアカデ……に戻す。だから、あの世……を守っ……』
「三、沢……」
そうだ、この声はあの親友の声だ。声はすれども姿は――いや、そもそもこの異世界に光はない。見えるようなものなど何もないのだ。
……だが、その世界に光が差し込まれる。その光に世界が割れるように両断されていき、その光の向こう側には、あのデュエル・アカデミアが――
『守ってくれ……ダークネスから……』
「――――」
その三沢の言葉を最後に、俺はそこから飛び起きる。視界に映ったのは知っている天井――今までに何度も利用していた、デュエル・アカデミアの保健室の天井。今の時間は真夜中なのか、島中からまるで光は発せられていない。
「ここは……俺は……?」
まだ混乱する自分を落ち着かせるために、今までに起きた覚えている限りのことを反芻する。十代が昔に使っていた精霊《ユベル》の計略により、異世界に送られた俺と明日香は、闇魔界の軍勢に囚われてしまった。そこで明日香は……《邪心経典》と呼ばれるカードの生け贄となり、俺はそのカードの効果で神のカードたる《究極封印神エクゾディオス》を手に入れた。
そしてその神のカードの力を持って、この異世界で起こったことをなかったことにしようとしたが、亮に命を賭けて阻止されアモンに神のカードを奪われた。だがまた奪い返すべくアモンにデュエルを挑み、機械戦士たちと共に勝利はしたものの、そこで俺も力尽きてしまった。
そこから再び謎の異世界に送られ、『他の異世界に囚われている仲間たちを救いに行く』と言っていた、三沢の声が確かに聞こえて……
「それ以上は忘れていただこうか」
「……誰だ!」
虫の音しかしなかったその静寂を、いつの間にかそこに現れていた人物が遮った。部屋の扉を開けるような音はせず、先程からここにいたという訳でもない。その黒いサングラスをかけた人物は、文字通り闇の中から現れていた。
「これは失敬。自己紹介がまだだったね。私は真実を語る者、トゥルーマン。ミスターT、とでも読んでもらおうか」
「ミスター……T……」
明らかに本名ではない……というよりも、俺たちの常識の枠内に収まるような人物なのか。異世界で出会った敵のモンスターたちと、同質の違和感を感じさせるその人物に、俺は身体の痛みを抑えながら警戒の意を示す。……平和的に解決出来るような存在ではないと、身体中が警鐘を鳴らしている。
「君の持つ真実は私たちにとって不都合だ。……消えてもらうとしよう」
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