幻影-イリュージョン-
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を見せ、恐怖を抱く。
「こ、この…!エア・ニードル!!」
このままや垂れるのをよしとできなかった兵の一人が、風の魔法をケルビムにぶつける。この程度で奴らが倒れるとは到底思ってはいないが、無抵抗のままやられるのだけはあってはならない。
しかし、奇妙な現象が、魔法がケルビムに直撃した途端に起こる。
エア・ニードルがケルビムの体を確かに貫いた。いや…貫いたといえるのだろうか?というよりも、『すり抜けた』といった方が正しかった。そもそも、魔法が通じないほどの頑丈な体を誇る怪獣を魔法で貫くことなどできないはずだ。
さらに奇妙な現象が起きた。魔法で貫かれたケルビムの姿が崩れ落ちたのだ。まるで黒く染まった泥が解けていくかのように。
「え…」
しかもケルビムだけでなく、他の怪獣たちもまた同じエフェクトで消え去ってしまった。
あっけなく奇妙すぎる結末に、アルビオンの兵たちは呆気に取られていた。
「一体…なんだったんだ」
訳がわからず、呟いたものが一人いた。アルビオンの兵、ヘンリーである。彼もまたこの調査部隊に配属されていた。起きたことが何だったのか理解できずにいたが、彼はそのときあるものを見つけ出した。
(これは…花?)
そう、花だ。欲見ると周囲に花が咲いている。だが、花とは本来夜は咲いておらず、花びらを閉じているはず。それに何より気になったのは…花の『色』だった。
「こんな黒い花、あったのか?」
気になって、上官に報告したのだが、上官からは厳しい言葉をぶつけられた。
「誇りあるアルビオンの兵とあろうものが花を愛でている場合か!」
「滅相もありません、自分はただ!」
危険な任務中に花などに見とれるなと叱り飛ばされてしまった。弁明しようとしても、上官は態度を崩さない。
「ふん、そういえばスタッフォードよ。貴様、確か…婚約者がいたか?」
「な、なぜそれを…!」
「たびたび貴様が後生大事にロケットの中の肖像画を見ていることが報告されていてな」
「ッ!」
それを聞いてヘンリーは息を詰まらせた。なるべく人前では見られないようにするつもりだったのだが、仲間たちにはばれてしまっていたらしい。
「女への情を残すあまり、作戦行動に支障が出るのなら即刻部隊から除隊させてもらうぞ。女にうつつを抜かして作戦を疎かにするようでは…「関係…ございません…!」……」
女のことで頭が持っていかれるようでは。上官の言葉に対し、ヘンリーはそれを遮るように言い返した。
「もう、彼女とは、婚約を破棄しました。だから関係ありません。
…任務に戻ります」
そこで抱かれているのは怒りか、悲しみか。握る拳を作るヘンリーの体は震えていた。
同時刻。
ウエストウッド村を出て、街道を南下したはてに、シュウたちはアルビオンの南の港町『ロサイス』に到着した。
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