幻影-イリュージョン-
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驚く少年をよそに、女性は言葉をつづけた。
「あなたはさ、もうちょっとさ………」
「な、なんだよ…『○○』」
「………したほうがいいって思うんだよね」
後ろ目で女性を見ながら少年は、彼女が何を言いたがっているのかを聞いてみるが、どうしてだろう。彼女の声が聞こえなくなった。
彼女は何を言いたかったのだろうか。
なぁ、何を言いたかったんだ?
教えてくれ…
――――知る必要はない
…?誰だ…?
――――お前が知ったところで、どうにもならない
なんで…?
――――なぜなら、お前は…
?…俺が、なんだって?
――――お前は、■■だからだ
俺が……■■………!?
――――そう、お前は■■…
――――ただの…
――――■■だ…!!
「はッ…!!」
シュウはそこで目を覚ました。嫌な汗を流したのか、べたつきを感じる。
「あ!」
眼前で自分の顔を覗き込む顔があった。エマだ。
「マチルダ姉ちゃん!テファ姉ちゃん!シュウ兄が起きたよ!」
満面の笑みを浮かべて皆に呼びかけると、テファたちが一斉に彼の顔を覗き込んだ。同時にシュウは起き上がる。
「…ここは…?」
起きたのは、テント屋根付き馬車の荷台の上。ガタガタと揺れている。マチルダが馬車を運転しているのだ。
と、急にぎゅっと体が引き寄せられた。
華のような香りが鼻をつき、やわらかい感触がシュウの上半身を覆った。気が付いたら、テファが自分に抱きついていた。
驚きはあった。でも、暖かな抱擁と目覚めたばかりで頭がボーっとしていた。
「よかった…無事で」
抱きしめていたテファの方はと言うと、彼をギュッと離さずに震えていた。どこまでも優しい彼女のことだ。凄まじく不安だったに違いない。
「…シュウ、もういいの。あなたは十分頑張ったわ。だから…」
やはりというべきか、彼女はシュウから戦うことを放棄することを勧めてきた。ついさっきの戦いで彼の戦いが、いかに苛烈で過酷で、時に残酷すぎるものなのかを大いに理解できてしまったのだ。
「お願い、もう…戦わないで。このまま戦ったら…本当に」
その青く澄んだ瞳は揺れていた。今にも、涙が溢れかえりそうだった。
その瞬間彼の脳裏に、よぎった。
たくさんの人たちが死ぬ姿が。
雨の中、自分の腕の中で冷たくなっていく少女の最期が。
言ったはずだぞ。俺が戦わなかったら…。
シュウは戦いを放棄でき
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