幻影-イリュージョン-
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(結局、あの男は何者だったんだ)
ゼットンとウルトラマンたちの戦いが終わってから、サウスゴータの街は酷い有様になっていた。よって駐留していた軍は復興作業に勤しむこととなり、ヘンリーも生き残った、または合流した別働隊の仲間たちと共に、復興作業に必要な資材を手に入れるためにこのロサイスを訪れていた。
サウスゴータでのウルトラマンの戦いの直前に、見知らぬあの男に返してもらったペンダントを見つめるヘンリー。
…これは、戦場に立つ自分にとって、心の支えとなる大切なもの。それは、婚約者の肖像画を収めていたロケットペンダントだった。
(…何を感傷に浸っている)
しかしヘンリーはこのペンダントに、その中に収めている肖像画の少女に対して複雑な感情を抱いていた。
このペンダントは、考えてみれば自分の未練の証だ。
一度自ら断ちきってしまっておきながら、後生大事に持ち続けていた。国を守る誇り高き戦士の癖になんとも女々しい。
いっそのこと失くしていたほうが正解だったかもしれない。あのペンダントのことも、ペンダントの中に収めた肖像画の彼女のことも。その方が、惰弱な精神を断ち切れると言うものだ。仲間たちも、きっと女々しいとなじるだろう。
たとえウルトラマンがいようといまいと、僕らは戦わなければならない。国のために戦って、死ぬ運命…遅かれ早かれ、トリステインとの戦争でどうせ死ぬ。だから僕は、『彼女』との未来を捨てたんだ。
ロケットペンダントに刻まれていた、彼女との未来を…
ヘンリーは、仲間たちの下へ合流することにした。
「………」
薄暗い部屋、机の上は機械の部品や書類で山済みになっていた。
少年は機械の内部に当たりの前のように内蔵されている、金属製の基盤に触れ、設計図らしき図面と見比べている。
基盤にパーツを組み込んでコードを刺し、スイッチを押す。すると、基盤が取りつけたパーツのおかげか、わずかに宙に浮き始める。
彼はその状況を見て鉛筆を手に取り、メモを取っていく。
長時間長くそのくらい空間での作業を続けてきたためか、彼は目が疲れてきたのか目元を抑え始める。うとうとしてきたのか、頭もぐらっと来ている。
「もう寝たらどう?」
後ろから少年の肩に触れてきた女性が声をかけてきた。
その女性は自分と同じくらいの年齢のようだった。姉弟のようでもあり、またはもっと違う形の関係のようにも見える間柄。
懐かしくて、温かい……。
「もうちょっとしたらね。まだ起きていた方がこいつを飛躍させるアイデアが浮かぶかもしれないしな」
少年はそう言って小さな笑みを見せ、作業を続けようとする。
「何言ってるの。どんなに頭がよくたってさ、休まなくちゃ体に毒だぞ?」
「おわ!?」
いきなり後ろから抱きつかれ、少年はびっくりして握っていた鉛筆を落としてしまう。
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