暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
解かれる結び目 16
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染まる、一面の
 …………瓦礫(がれき)の、山。

「……どうして?」

 私は神殿の祭壇に、屋内に移動した筈。
 なのに、見渡す景色は荒れ放題で。
 遠くに見えるあれは、壊れた噴水?
 その向こうには、何も無い。
 枯れ折れた真っ黒な木々と、あちこち抉り取られた地面が。
 西の果てへと沈みかけた真っ赤な太陽に、照らされている、だけ。

 足下にあるのは、崩れ落ちた石壁と、折れて転がった石柱。
 辛うじて形を保っているのは、頑丈な石床で……

 ここは、ドコ? こんな場所、私、知らない。
 私の家は、こんなんじゃ……っ

「神々が世界を渡ってすぐ、悪魔共が束になって、神殿を強襲したらしい。奴らにしてみれば神々も魔王も己を抑圧する存在故、解放の宴には丁度良い標的だったのだろう。我は、間に合わなかった」

 膝から力が抜ける。
 粉々に砕けた壁画の一部が、突いた両膝を少しだけ傷付けた。

「生き残った人、は」
「おらぬ。騎士も神官も、その他の官人も皆、例外なく殺された」

 ……誰も、居ない?

 コーネリアもウェルスも、アルフリードも失って。
 帰る家すら……友達の一人すら。
 私には残されていなかったのか。
 
『君の気持ちを預からせてもらう』

 泣きそうな苦笑いで応えてくれたエルンスト。
 貴方に結んだ薄紅色のリボンは、もう二度と。
 この目で見ることさえ、叶わない。

「…………────っ!」

 湧き上がる感情のまま、圧縮した『空間』の玉を無数に作って爆発させ。
 私自身を中心にして、瓦礫を放射状に弾き飛ばす。
 石床に描かれた翼の紋様が。飾り物より役立たずな天神(てんじん)の一族の御印が。
 紅蓮に燃える空の下へ曝される。

「どうすれば、良いのですか?」

 両手で顔を覆い、うつむいたまま為すべきことを問う私に。
 ティーは黙って石床の中心を指した。
 開いた指の隙間から、それを確認する。

 ここに、アリアの為の道を残せという意味か。
 私達がいなくなっても、神々が眠る世界へと繋げられる導き……(きざはし)を。

「お主の力で、この床と我の眼球に意識を籠めよ。ちと痛むが、我慢せい」

 足元に蔓籠(つるかご)を置いたティーが。
 吹き飛んだ瓦礫の中から、尖った石を適当に選び、拾ってきて。
 自身と私の右手首を深く切る。
 傷口から溢れ出た二人の鮮血が、石床にパタパタと滴り、混ざり合う。

 痛みなんか、とっくに振り切ってる。
 私に残された唯一のものを護る為になら……ティー。
 貴方の力だって、遠慮なく利用させてもらうわ。

「神々が眠る世界への(きざはし)には(かんなぎ)である私の意志を刻む。貴方
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