暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
解かれる結び目 16
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
とアリアの接触を回避する為の一時的な措置。その上、封印している間のアリアは人間同然だ。レゾネクト以外の脅威(きょうい)に対しても、人間と同様に無力となる。それは理解しておけ」

 一時的。いつかは解けてしまう。
 いつか必ず、アリアとレゾネクトが力で繋がってしまう。
 そうなったら、この世界は。アリアは。

「やっぱり、そうするしか、ないのですね」
「恐ろしいか」
「はい。でも私は、大切なものを二度と失いたくない」

 ベッドから下りて蔓籠(つるかご)の前に立ち、眠っているアリアに手を翳す。

 可愛いアリア。
 私の娘。
 たとえ、ほんの少しの間だけだとしても、人間として、生きて。
 私も、生きる努力はするから。
 貴女と生きる為に、頑張ってみるから。

「ごめんなさい、アリア」

 アリアの内に大きな力を感じる。
 それを包み込む想像をする。
 『空間』も祝福も、私達に連なる力はすべて、丸く閉じ込める。
 そして、ティーが『空間』の時を、止めた。
 背中の翼が消えた今のアリアは、無力な人間の赤子と変わらない。

「せめて、アリアに自我が芽生えておれば、すぐにでも神々が眠る世界へと道を示してやれたのだが。それまでに決着をつけるほうが()()現実的だな」

 私達の封印はきっと完璧じゃない。
 何がきっかけになって、いつ弛むか知れないと考えれば。
 この状況でアリアの自我を育てるのは好ましくない。
 アリアの危険は生涯続いていくんだ。
 根源を絶たない限り、これから先、ずっと。

「行くぞ、マリア」

 アリアが眠る籠を左腕に抱えたティーが、右手を私の肩に置く。
 行くぞ……って、瞬間移動をしろってこと?

「どこへ?」
天神(てんじん)の一族が守護していた神殿。お主の家だ」

 神殿。
 懐かしい、黄寄り黒寄り白寄りと、様々な緑色に囲まれていた純白の……

「あまり見せたくはなかったがの。とりあえず、神殿の祭壇へ跳べ」
「? わかりました」

 目蓋を閉じて思い浮かべる、神殿の祭壇。
 代々の(かんなぎ)達が、神々の託宣を授かっていた場所。
 ステンドグラスを透過した美しい光彩と。
 精緻(せいち)に描かれた壁画が、静かに見守っている空間。
 ティーのこじんまりとした家から、広い屋内へと移動して。

 簡易なローブの裾が。長い白金の髪が。
 ()()()()()()()()()()()()()()()

「? 『風』?」

 違和感に誘われて開いた視界に飛び込んできたのは。
 火の粉を舞い上げて燃え盛る炎のような夕暮れ色に
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ