6部分:第六章
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「いえ、そんなことは」
僕はそれを否定しようとした。だがその時腹が鳴った。
「そのようですね」
彼は微笑んで言った。
「神の御前では隠し事は出来ません。そして困っている者を救うのは神に仕える者の勤めです」
「はあ」
僕はそれを黙って聞いていた。
実は僕はキリスト教徒ではない。特に偏見はないつもりだがあまり親しんでいるわけではない。だから教会に入るのは少しはばかれるのだ。
「こちらへ。丁度私も食事にしようと考えていたところです」
僕は教会へ招かれた。
「どうぞ。大したものはありませんが」
ジャガイモとパン、そしてソーセージであった。
「如何ですか」
神父はテーブルの向かい側に座り僕に尋ねてきた。
「いえ、美味しいですよ」
それは本当であった。特にバターを塗ったジャガイモは最高であった。
どうも日本のジャガイモと違うようだ。これはドイツに最初に来た時から思っていたことだがこの国のジャガイモは我が国のジャガイモとは何かが違う。
どう調理されるかという前提が大きく関わってくるのだろうか。我が国のジャガイモはカレーに入れたり肉じゃがにしたりして食べることが多い。これに対してドイツのジャガイモはマッシュポテトにしたりパイにしたりする。勿論こうして茹でてバターを塗って食べることも多い。
ソーセージはやはり本場だろうか。こちらの方が美味しいと思う。作り方の歴史的な年季もあるのだろうか。
パンは黒パンである。教会だから質素にしたのだろうが日本にいる時は白パンばかりなのでこれは珍しかった。
「本当に気に入ってもらえたようですね」
神父は僕が食べる姿を見て微笑みながら言った。
「我が国は食べ物は今一つだとよく言われますのでこれ程美味しそうに食べて頂けるとは思いませんでした」
「いえいえ、とんでもない。日本でもこんな美味しいソーセージは食べられませんよ」
僕はソーセージを頬張りつつ答えた。
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