月下に咲く薔薇 6.
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俺は、ソレスタルビーイングと出会えた事、そしてロックオン・ストラトスという要の男とこうして話ができた事に感謝したい」
「おいおい、要はお前だろ?」
「いや、俺は。…そうだな。今は、名の通りの役割を果たそう。ゼロが自力で立ち直るまで」
「ま、今はそれでいいか」どうしてもゼロの存在に依存してしまう扇の気質を、今指摘するのは得策ではない。風を入れ替えるべく、とにかく企画に加わる気になったのだ。その辺りのところだけを尊重しておこうと、ロックオンは考える。「このまま一緒に来るか? 買い出し前の集合場所は、第4会議室だ」
「いや、後から行く。一応、ゼロと玉城には俺の居場所を常時伝えておく事にしているんだ」
「なら、待ってるぜ」
「ああ。必ず行く」
扇を無頼の前に残し、ロックオンは1人ダイグレンの格納庫を出ようとした。
が、長髪の人影が突然右から現れ、しまったと数歩後じさる。
右目が失明して以来、意識して音をしっかりと拾うようにしていたのだが、格納庫という場所柄、靴音のような小さな音は整備音にかき消されつい聞き取り損ねてしまう。
「失礼!」
交錯直前に互いが相手を発見し、2人は半端な角度で対面する。
「いや、私も考え事をしながら歩いていた。済まない」
ロックオンを先に行かせようとしているのは、アテナだった。ZEUTH所属の軍属パイロットで、本当か嘘かあの桂木桂の娘だと聞いている。
顔立ちは母親似らしく、父親と娘、流石にそっくりという程ではない。
「お先にどうぞ」と一歩退いて場所を譲る。「但し、考え事をしながら歩くのはやめた方がいいな」
もし怪我をしようものなら、ミシェルやピエールの見舞い合戦になるから。そう思うも口には出さず、アテナを先に行かせるロックオンは、ふと目の端に止まったものを見て、妙な胸騒ぎを覚えた。
「ちょっと待った!」慌てて女性の背中に呼びかけ、アテナが右手で弄んでいるものを覗き込んで息を止める。
「ああ、これか?」時に男性のような口調で話すアテナが、余り興味がなさそうに1輪のバラをガンダムマイスターに差し出した。「先程、ナイキックのコクピットで発見したものだ。誰かの悪戯だと思うのだが、欲しいのならやろう」
「いや…。そうじゃなくって」
言葉がすぐに出てこない。男にプレゼントした後は、女だと? 一体誰が、何をしたくて花の贈り物などを始めたのか。
ロックオンの眼前にあるのは、既視感に彩られた見惚れる程に美しい真っ赤なバラだった。棘付き、しかも花の放つ怪しさといい、クランが持っていたものと余りにも酷似している。
偶然と片付けていい筈がなかった。
確かにいる。これまでの想像とは異なる何者かが、このバトルキャンプの中に。
− 7.に続く −
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