月下に咲く薔薇 6.
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の判断だというのなら」
「飯は?」
「まだだ」
「なら、余計飲んどいた方がいい。砂糖入りだから、頭がスキッとするぞ」半ば強引に缶コーヒーを渡し、クロウは「軽く済ませる気があるなら、そうしろ。時間と場所の事は聞いてるか?」と声をかけながらも背を向ける。
今は、そっけないくらいの態度の方がティエリアの負担が低かろう。
「ああ、必ず行く」
「当てにしてるぜ」
そのまま振り返らずに、クロウは傷心の少年と別れた。
自分を責めるばかりの彼も、軋む心を引きずりながら何とか立ち上がろうとしている。
扇の方はどうなっているのだろうか。ロックオンの意気込みを信用しつつ、塞いでいたティエリアにしてやれる事は全てしたと自らを納得させる。
全く、これだから暇だといけない。うっかり充実感などを感じてしまうではないか。
* * *
一方、クロウと別れたロックオンは、黒の騎士団に宛がわれた部屋の幾つかを訪ねて回り、最終的にはダイグレンの中で目当ての姿を発見する。
愛機の無頼を見上げていた扇は、ガンダムマイスターに呼び止められた後、話を黙って最後まで聞いていた。
「無理にとは言わない」注釈を付けて逃げ道を用意してやった後、ロックオンは説得に乗り出す。「だが、俺はあんたの立場を少しはわかっているつもりだ。黒の騎士団の中にあるものを最初に払拭するのは、サブ・リーダーであるあんたの役割だと思わないか?」
「ロックオン…」
「そりゃあ、ゼロは黒の騎士団の中心だ。ゼロのカリスマと戦術を抜きにしては語れないものも多いんだろう。だが、そのゼロも今は何かから抜けだそうとしてもがいてる。あんたにも色々あるんだろうが、黒の騎士団はゼロだけで支えてる訳じゃない。こういう時の歩き出し方を、仲間のみんなに示してやれるんじゃないのか。扇要という男なら、な」
少し呆けた表情をし、扇は見ていた。片目となったロックオンの、その真面目な顔つきを。
「俺は…」言おうか言うまいか迷ってから、敢えて扇に話して聞かせる。「俺は、ティエリアが必ず立ち直るって信じている。あいつも今は打ちのめされて自分の殻に籠もってはいるが、それでチャンスを逃した時、ガンダムマイスターとして後悔する事もあいつはきっと自覚している。だってお笑いだろう? 悲願を果たすつもりでいたのに、いざ自分に痛みが襲って来た時、その痛みに目が眩んで立ち止まったままだの、よそ見だのとか」
相槌すらつく事ができず、扇が棒立ちしたままソレスタルビーイングの話を聞いている。
「なぁ、扇。俺は思うんだが、力が足りないから今痛みがあるんじゃない。力を持つに相応しい心の強さが足らないから、無駄に自分を責めるんだ。違うか?」
ごくりと唾を飲む音がした。やがて、扇の唇が震えつつも動く。
「俺は…、
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