月下に咲く薔薇 6.
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てるし、単に誤差の範囲内ってやつじゃないのか? そういう事もあるさ」
「まぁ…、お前の言う通りではあるんだが…」
ロックオンもまた、死角に入っていた中原の様子をようやく左の眼球で捕捉し慌てて言葉を濁す。
「行ってこいよ、扇のところに。出発までそう時間がないぞ」
クロウが急かすと、ロックオンが頷いて見せた。
「じゃあ、1時間後にここでな」
踵を返したのでそのまま歩き出すかと思いきや、隻眼の男がいきなり振り返る。
「中原さんも急いだ方がいい。それから、ロジャー達が秘密にしたがっているから、今の話は内緒って事でヨロシク」
「はい」
ようやく会議室を出たスナイパーは、今度こそ戻って来なかった。
「じゃあ俺も」と歩き出すクロウの背後で、壁掛け時計に目をやった中原が「もうこんな時間!?」と両手を口に当てる。
再度の集合まで、1時間どころかあと46分しかない。想定外の事態に時間を費やした結果だった。
「お互い、ここからは駆け足だな」
中原と顔を見合わせてから、クロウは1人ロジャー達を追う。
頼まれた訳ではない事は百も承知だ。しかし、中原のあの表情とロックオンが飲み込んだものを思うと、はぐらかした者の責任として詳細は掴んでおくべきと考える。
幸い、件のロジャーはすぐに見つかった。ティファのいる場所と目星をつければ、足は自然とそちらに向く。
ブータのいる所だ。
端から見れば不思議な光景に映るかもしれないが、ZEXISが移動する際には何匹かの動物が行動を共にする。メンバーが連れている為で、犬1匹、ブタモグラ1匹、フェレットのようなもの数匹とおよそ軍隊とは程遠い構成を仲間として抱えている。
シモンは、それらの飼い主の1人だ。彼を慕いついて回るブータは、今でこそ体は小さいが、いずれ大人がその背に跨がる事のできる四つ足の食用獣に成長するのだという。
最近のティファはそのブータに興味があるのか、シモンの近くで見かける事が多かった。
今はバトルキャンプの食堂にいる。そう見当をつけたクロウの勘は当たった。
飼い主と共に朝食を済ませすっかり満ち足りたブータは、ティファの掌に乗り、最上の機嫌でブッブーッと某かを話しかけている。
椅子に座っている少女の側に、立ったままのガロードとロジャーの姿があった。ブータの飼い主であるシモンはニア姫と共にティファの向かいに座り、かわいがられているブタモグラを優しく見守っている。
ロジャーの唇は動いておらず、ガロードに至っては時間を持て余しやや離れた所にいる女性のボディラインを遠方から目でなぞる。
食堂には他に、キタンとミヅキがいた。厨房の奥と盛んにやりとりするグランナイツをちらちらと見ているキタンも、やっている事はガロードと大差ない。
いいものを見た、という顔をし上体を起こす
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