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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 6.
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に行くつもりのようだ」
「彼女?」
 鸚鵡返しに、隻眼のスナイパーが繰り返す。
 クロウとロックオンは、ほぼ同じタイミングで全く同じ1人の少女を思い浮かべた。
 栗色の長髪を一つに束ねた、ZEUTH一番の色白な美少女。体が弱く白兵戦には向かないが、ガロードと同じガンダムに搭乗し操縦以外のサポートをしている。
 アムロ達も一目置く程の高レベルなニュータイプとして覚醒しており、条件さえ整えば人心を読み、物理的な距離を無視して人の存在を感知する事さえできるという破格の能力者だ。
「…ティファの事だろ」
「だよな」
「おそらく彼女の事ですよね」
 ロックオンの断定を、クロウと中原も肯定した。
「あのカラミティ・バースでこっちの多元世界に飛ばされて以降、彼女の能力も随分と働きにくくなっているって聞いたんだが」
 記憶を辿りながら話すロックオンに、「色々な力が相殺するから、とかそんな内容だったような」とクロウが付け加えた。
「ああ」
「それでも何かを感じたってのか?」
 クロウも、ティファについて聞いた話を覚えている。繊細な情報処理をするニュータイプだからこそ、様々な力が時空に働く環境下ではその能力を最高域で発揮する事が些か困難なのだ、と。
 それでもアムロやクワトロ、カミーユ達が非常に優れたパイロットとして過酷な戦場で戦果を上げる事ができるのには、全く別な理由がある。幾分か減衰した能力の使い方を、彼等は意識し変えているというのだ。
 以前にカミーユは、その手法の変更について「感じて撃つのをやめて、感じながらも操縦に力を乗せるやり方に変えた」と表現していた。勿論クロウとしては、ただ頷いてやるより他にない。鋭利なニュータイプの感覚やその使い方を説明一つで理解してやれる筈がないのだから。
 特徴として彼等ニュータイプは、次元獣やイマージュの出現などによって起きる次元の歪みを特に嫌う傾向がある。ところがZEXISが活動するこの地球は、次元獣バスターなる職業が成り立つ程次元獣の出現頻度に辟易している多元世界だ。その中でティファは、未だ「使い方を変える」途中にあるのかもしれない。
「お前は信じるか? もしそれが、あのお嬢ちゃんの感じた不安だとしたら」
 至極真面目な口調で、ロックオンが会議室に戻りながら右手でぐるりを指した。ここが異変の舞台になる筈だったと聞けば、当然ガンダムマイスターには戦士としての顔が表出する。
「そうだな」
 つられて無意識に視線を移す。と、中原の様子が視界の隅に捉えられた。
 彼女の眼差しは落ち着いているものの、知ってしまった後悔と仕事人としての顔の間で目の輝きが揺れている。即座に、しまった、と思った。
「俺だって昨夜からおかしな事の連続だ、とは思うさ。だが、折角心配してもらった打ち合わせはああして無事に終わっ
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