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101番目の舶ィ語
第十一話。散花
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「……うん、解った、任せて。あんたはどうする?」

音央はいつも通りに接してくれた。
だから俺は、もう見っともないとこは見せられない!
ここで甘えたり、泣きつくのは逃げだ。
逃げるのはいつでもできる。
2人ならそれを許してくれる。
だから、なおさらそれはできない。
2人の物語の主人公として。みんなを物語にした主人公として胸を張っていられる為に。
俺は逃げない!

「手に入れた情報をキリカに伝えてくるよ」


そう。逃げ場にする為じゃなくて。前へと進む為に。
今、ここにいない仲間に伝達し、対応を相談する。
それが主人公()魔女(キリカ)の関係なんだから。

「解りました。でも、モンジさん」

「うん?」

懐からハンカチを取り出した鳴央ちゃんは。

「せめてこれを」

俺に手渡してくれた。

「……ありがとう、鳴央ちゃんには優しくして貰ってばかりだな」

「音央ちゃんにも、ですよね?」

「ははっ、その通りだ」

わざと明るく笑いながら、ハンカチを受け取った。
そのハンカチが妙に暖かく感じて、何だか泣きそうになってきた。
いかん。こんなところで泣き顔なんて見せられん。
人前で泣くなんて。女性の前で男が泣くなんて見っともないからな。

「それでは、庭園の出口を……キリカさんの家の辺りにしておきますね?」

「別に文句とかつけるつもりもないし、何か言うつもりはないけどさ」

「ああ」

「ちゃんとあんたらしく、立ち直りなさいよね」

「…………」

俺らしく、か……。

「音央、君はやっぱりいい女だよ」

「そんなのとっくに解ってたでしょ?」

「ふふっ」

俺と音央のやり取りに、鳴央ちゃんが微笑む。
______そう、これだ。
俺はこんな空気を守る為に、ちゃんと立ち直らないといけないんだ。
今はまだ、とってつけた『いつも通り』だけど。
それが当たり前の『日常』を取り戻さないといけないんだ。

「任せて! って言いたいところだけど……うん、まあ……もう少し後悔するよ」

「そうね。いっぱい反省して、どん底から這い上がりなさい」

「お待ちしてますね」

俺に叱咤激励してくれた音央と鳴央ちゃん。
そんな彼女を見ると改めて思う。
……あの時、頑張ってこの2人を助けてよかった、と。
そんな気持ちが、悔しさで潰されそうだった俺の一つの糧になる。
今はこの気持ちがあれば、前へと進めそうだ。

「それじゃ、頼む」

「はい」


俺は、この優しい『妖精庭園(フェアリーガーデン)』から抜け出して。
今は力を失っている『魔女』の元へと向かったのだった。
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