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101番目の舶ィ語
第十一話。散花
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んでいてもおかしくないくらいに。
『死にかけて』いた。
そう。それはつまり。
俺はなっているということだ。
HSSの派生の一つ。ヒステリア・アゴニザンテ______別名、『死に際の(ダイイング)ヒステリア』。瀕死の重症を負った男は、死ぬ前に子孫を残す本能がある。これは、その本能を利用して発現させるヒステリアモードだ。
それは______命と引き換えのヒステリアモード。
だが、まだ俺は動ける。
それはきっと。ハーフロアとして、人間よりも生命力とか、基礎体力が大幅に上がっているからだろう。

「っ、モンジさん……」

俺の変化を感じ取ったのか。鳴央ちゃんが息を飲むのが解った。

「音央。一之江のこと、ちゃんと見てやってくれないか? 俺は、一之江の姿を見ることはできないから、さ」

自分でも声が震えてるのが解る。
______音央と鳴央ちゃんが来てくれなかったら、俺はあいつらに負けていた。ちょうどいいタイミングで仲間が現れるなんて、漫画だけだと思っていた。
来てくれなかったら……俺は。

「……ちきしょう……」

大切な女性を守れなかった。
それが何よりも悔しい。

「モンジ……」

「モンジさん……」

悔しかった。どうしようもなく、果てしなく悔しかった。あんなババコンのナルシストメガネに負けたこととか、そういうこともあるが。それだけじゃなく。
自分が。一之江に庇われるまで何も出来なかった自分が。
そして……一之江を傷つけさせてしまった自分が。
何よりも肌立たしくて、許せなくて、悔しかった。

「俺は、俺は……一之江や……キリカ……音央や……鳴央ちゃん……みんなの、物語の主人公なのに……!」

それなのに、助けられてばかりで。何かをしてあげることなんて何もなくて。
今だってそうだ。鳴央ちゃんの『妖精庭園(フェアリーガーデン)』のおかげで安心して隠れることが出来ているから甘えられている。
いくらどんなに強い戦闘力を持っていても。
ヒステリアモードで戦えても。
______それでもロアを相手にするには力が足りないんだ。
今のままでは大切な女性すら守れない。
今回の戦いで俺はその程度の人間なのだ、と。
まざまざと思い知らされた。

「あ……えっと……」

何か声をかけようとしてくる鳴央ちゃん。

「…………」

そんな彼女を、首を振って止める音央。
今、優しい言葉をかけられたら俺はそれに甘えてしまうから。
今、厳しい言葉を投げかけたら逆切れしてしまうかもしれないから。
だから、何も言わないでいるのが正解。音央は腐れ縁だけあって、『俺』のことをよく解っている。
だから今は、それに甘えさせて貰う。

「一之江を頼む、どんな怪我をしてるか解らないけど」


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