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101番目の舶ィ語
第九話。『音速境界』
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その瞬間、制服の胸ポケットとズボンのポケットに入れていたDフォンが発熱し、気づけば辺りに人の気配が無くなっていた。
恐る恐るDフォンを取り出すと、赤く発光し、俺自身に危険が迫っていることを知らせてくれていた。
はっ! とDフォンからヤシロちゃんへと視線を戻すと。そこに……
ヤシロちゃんの姿は……ない。
もう、彼女は役目を終えたのだろう。
この状況は俺が初めてヤシロちゃんと出会った日と似ている。
それはつまり。
これから新たな『敵』に襲われるということだ。

「はぁ……不幸だ」

今日は朝からツイてない。
学校では赤マント。夜はベッド下の男。そして……。

「初めまして、『101番目の百物語(ハンドレッドワン)』」

人気のない十字路の中心に、見覚えのない人物が立っていた。
背は俺と同じくらいだろうか。細身で、街灯に照らされたメガネが光っているのが特徴的の青年。
なんだが気取ったポーズで立っているが、その声には自信が満ち溢れていた。

「……初めまして。で、お前は誰だ?」

ヤシロちゃんの言っていた『良くないもの』だろうか。
警戒レベルを2に引き上げて対応しとこう。
そう思った俺はすぐに一之江を呼び出せるようにDフォンのデータフォルダを開いておく。
これでボタンを一つ押せばいつでも一之江を呼び出せる。

「俺は『蒼の邪眼(ブルーアイズ)』」

そう名乗った青年のメガネの下にある双眸が、怪しく______青く光っていた。
その瞬間、Dフォンが制服越しでも痛いくらいに熱く発熱し、赤い輝きを増している。

「お前の物語を取り込みにきた……『主人公』だ!」

青年がメガネを外してその双眸を見せた瞬間、俺は彼に背を向けて。
一目散に駆け出した。

「悪いが、そういうのは間に合ってるんだ!」

「逃がしはしないぞ! 来い、ライン!」

背後で『蒼の邪眼(ブルーアイズ)』が誰かを呼ぶ声が聞こえて。
直後、突風が吹いた。

「っ??」

俺は慌てて足を止めた。
気づけば、俺の数メートル先に『蒼の邪眼(ブルーアイズ)』と……。
ゴシックロリータという、理子が好き好んで着そうな、フリフリでヒラヒラな、西洋の人形が着ているような服装を身に纏った少女が立っていた。年齢は小学生の高学年くらいだろうか。
怪我でもしているのか、身体の至るところに包帯が巻かれており、その片目も包帯に包まれている。
その様はどちらかというと怪我の痛々しさというより、ゴシックホラー的な恐怖と威圧感を放っていた。

「わらわを呼ぶほどの相手なのか、氷澄(ひずみ)?」

「こいつには『最強』と名高い殺戮都市伝説、『月隠のメリーズドール』がいるからな。
ちょっとした油断が即、命取りになるはずだ」
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