第九話。『音速境界』
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葉を聞いた直後。
ラインの姿が、再び一瞬で______路地の先に現れた。
やっつける、なんて簡単に言ってくれるが。実際、今のままでは一之江が対応できない状況というのも確かで。そして、ラインの目は明らかに……一之江だけではなく、俺のことも狙っている。
そこに加えて。コイツらは一緒に技を放とうとしている。
俺が自在に使えない『主人公』としての力を既に持っていて。
______それが俺達に向けられる。
それが解った瞬間。
全身を冷たい汗が流れた。
このまま、このまま、何も出来ずに……コイツらに倒される?
そうなったら、キリカは。音央は。鳴央ちゃんは。
一之江は、どうなってしまうんだ?
頭の中を焦りが支配してぐるぐると駆け巡るが、相手は『速度』に秀でた都市伝説。俺が迷っている時間なんて与えてくれるはずもなく。
「二人とも吹き飛ばしてくれる、ゆくぞ!」
畜生! やめろ、やめてくれっ。
こんなこと、俺の女達に手を出すな!
「やめ……」
口にしようとした瞬間には。
「『厄災の眼』!」
辺りの景色が一瞬で青と黒のモノトーンカラーに染まり。
「『音速境界』!」
「っ?? モンジ!」
その一瞬で何が起きたのか解らなかった。
俺の目の前で、長い金髪がはらりと舞い。
その少女の服装は、さっき見た一之江の……ボロボロの人形衣装で。
それが、一之江の『ロア』状態である、というのを初めて認識した瞬間。
ズガガガガガガガガ??
物凄い衝撃が走り抜けて、一之江の体が大きく弾かれて上空に飛ばされていた。
「なっ……??」
何が起きたのかさっぱり解らなかった。
まさか。
まさか、一之江は俺を庇って……?
そして、今。
「くはっ……」
小さな吐息と共に、アスファルトの上に落ちてそのまま倒れ込んだ。
「ほう。二人に降りかかるはずの災厄を……一人で肩代わりしたというのか」
「ちっ、まさか『主人公』を庇うなど、わらわは絶対にしない行動じゃの」
「いや、お前もたまには俺を敬えよ、ライン」
俺達の背後……ずっと後ろの方からライン達の声が聞こえてきた。
そんなやり取りを聞いていられるくらい冷静でいられる自分に驚く。
ああ……そうか。俺は……。
「まあ、『主人公』が足を引っ張るようじゃ、どんなに強いロアでも勝てるはずがない」
氷澄の声は聞こえていたが、頭の中には入らなかった。
「俺は貴様を倒して……貴様ごとその『物語』を奪うぞ」
氷澄の口から出されたのは最後忠告だった。
だが俺は思いの他。冷静でいられた。
冷静な自分に自分自身で驚く。
これは……?
「『|音速境界《ラ
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