第八話。『星座の女神』
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当ならこんな心配はいらないなんていうことは知ってるが。
でも、やっぱり気になっちまうんだよな。
こういう子も、ちゃんと楽しい日常を過ごせるようになればいい。
そんな風に思ってしまう。
「お兄さん?」
「っと、悪い。考え事をしていた」
「ううん。わたしのことまで考えるなんて。お兄さんはやっぱりスケコマシさんだね」
「うぐっ」
一之江に言われた『ハーレム野郎』という言葉を思い出す。
俺はハーレム野郎なのか……。
いや、違う。ただの誤解だ。
女を避けてる俺がハーレム野郎なはずはない。絶対。うん。
「それでね。十字路……『四辻』では、良くないものと出会う。そんな都市伝説が実はあったりしてね?」
「ん? 良くないもの?」
「そう。だからこの先に進めば、お兄さんはこれから『主人公』として、とても大変なことになるの」
「『主人公』として……?」
胸の鼓動が高まる。それは今正に俺が悩んでいるものだからだ。
「その結果、もしかしたら望まない方向に向かうかもしれないし、望んでも苦しいことになるかもしれない。今なら、ここを戻ればそういう苦しい思いをしなくても済むけど。どうする?」
このまま進めば、望む望まないに限らず、苦しい道になるかもしれない、か。
そして、ここから早急に立ち去れば。先輩の家にでも戻れば。
きっと朝が来て、ドキドキ、デレデレして怒られる……という。
当たり前な日常を過ごせるのだろう。
迷うことなんかねえ!
当たり前な日常を選ぶべきだ。
俺が一番望んでいるのはそれだろ?
そう思っているのに。
「進んだ先に……俺が望んだものはあるのか?」
そんな質問をしてしまう。
俺の質問に対し、ヤシロちゃんは少しもったいぶるかのように歩いてから。
くるっと体を向けて。
「苦しくても、進めば何かはあるよ」
ただ一言、そう告げた。
「……戻ると何もないってことか」
進むか、戻るか。
その二択しかないのなら……
俺が出す答えは決まっている。
「ありがとう、ヤシロちゃん。やっぱり俺は先に進むよ。苦しくても、自分に何が出来るのか探してみるよ」
その『何か』も、探してみなければずっと見つからないままだしな。
たとえ苦しくても進まなければ、何も手に入らない。
それに俺は東池袋高で学んだ。
『力を持つ者には正しく力を使う責任がある』ということを。
「そう、やっぱり進むんだね。そんなお兄さんに、朗報なんだけど」
「朗報?」
「うん。この先に進めば、お兄さんはみんなを守れるようになるかもしれない」
みんなを守れるように?
「それは……」
どういう意味だ、と聞こうとしたところで。
「もっとも、
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