第十二話:傾かぬ
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くで戦へと向かわされるだけとは……八方ふさがりとはこの事だ。
だが何も口にしないのも癪で、兼ねてより抱いていた文句を口にする。
「何が逆らったらだ……お袋に頭が上がらず、尻に敷かれている事を棚に上げるなよ、親父」
「うっ……う、うるさい、お前だってその内分かるようになる。諦感ができるさ、女に逆らっても碌な事が無いとな。ワシの血が流れているのだ、それは断言しても良い」
「するな、なってたまるか」
「いいやなる。なってしまう。ワシの子なのだから。やれやれだぜ、等と言いながら結局は言う事を聞いてしまうようになる」
「ウフフ、クスクス」
「……笑ってんじゃねぇ、楓子」
親父から随分と勝手な事を言われ続け、ついでに楓子にも意味深長な笑みで笑われ、視線をそらさず睨んでいると、止めなのかマリスから―――――
「……やはり私は運がいい」
「舐めてるのか……?」
どう考えても舐めきられている台詞を掛けられた。
これで声を荒げない俺を、誰か少しでもいいから、痛い奴と思われても良いから誉めて欲しい。
こんな無駄でしかないやり取りをしていると、如何やら気のせいでもなかったようで、俺にとっては不快な臭いの混じり始めた……しかし親父や楓子、マリスにとってはとても良い匂いを漂わせ、まずはうどんの丼を、次にかき揚げの乗った皿をお袋が運んできた。
「そうと決まれば栄養を付け、英気を養わなきゃね。一杯食べてちょうだい」
「おお、きたか」
「まってましたーっ!」
「……いい匂い」
「何も決まってねえんだよ……」
誰もかれもが既成事実にし、俺一人だけ蚊帳の外にする中で、各々に手を付け食事を始めてしまう。そしてついに、味覚でも蚊帳の外になってしまい、俺はクソったれな美味に震えながら感想も言わず黙々と啜る。
たっぷりと汁気を吸った細長い『毛糸の束』を口に入れ、思った通りさくさくとした『重油』の様な何かに囲まれた、『プラスチックと腐りかけの野菜』をただ何も言わずに齧る。
さっさと食事を終えてしまうべく、しかし味の所為で箸が進まず悶々としていると、隣から出された丼が目の前に現れる。
「おかわり」
もう一杯目を食い終わったらしい。超がつくぐらいのハイペースだ、そこだけは見習いたい……まあ無理だが。
「うん、遠慮しないでねマリスたん! どんどん茹でるしどんどん揚げるから、たーっくさん食べてね!」
「うふふ、楓子ったら調子いいんだから。揚げるのは母さんなのに」
「だが良い事だ。どうだいマリスちゃん、優子さんの食事は」
「……おいしい、とてもおいしい」
「そうか、良かったなマリスちゃん」
一家団欒と言った感じで睦まじく会話する横で、俺だけが暗
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