第十二話:傾かぬ
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きたかのように睨んだのだ。何時もなら此方も親父を睨みつける所だが、常時とは違う所作に俺も首を傾げてしまう。
結局は親父が流した事で、うやむやになってしまった……だが、 “此方” はまだ続いている。
「やだやだやだやだやだやだやだやだーやだーやだー!!」
もうこうなったら手がつけられない。
楓子なら親父じゃあ無く、俺が打撃をぶち込む事で如何にか収まるが、親父と言う理不尽な肉の壁がある以上、そんな手は通じない。
畳の上でジタバタ暴れるお袋に、親父は困ったと言いたげに頭を書き、視線定まらぬ瞳で見やった。
「撤回する、撤回するから落ちついてくれ、優子さん」
その言葉でお袋は漸く立ち上がるが、何故か親父にぴったり寄り添っていった。
……もう面倒くさい事を見たくない一心で、俺は一旦トイレへ行くと、元々イライラからなのだから用も足さずに手だけ洗って、食卓に戻る。
お袋は既に台所へ戻っており、親父はどっと疲れた顔をしていた。お袋の頬にキスマークがあるので、何が起こったかは想像するまでもない。
「あー……そういうわけだ麟斗。お前がパートナーとして頑張りなさい」
「如何言う訳だ」
「元々不可能なのだし、道の繋がっていない方法を模索するよりは、可能性があるお前がマリスちゃんのパートナーとして頑張りなさい、と言う訳だ」
「……」
「ワシの息子として立派に義務を果たせ、良いな」
「……良い訳あるかよッ……!」
「なら歯をくいしばれ」
その後何も言わなかったからか、二発目の拳骨をくらい先程と同じ状況を作り出す事となった。だが、俺の心の内だけは先と違う。
見直して損した、それだけが締めてやがるよ、今は。
父としての威厳や低際、妻との愛が、息子の安全を上回ったって事だからな。つまりは所詮 “その程度” って事か。
まあ、流石にここまで行けば、穿った見方かもしれないが……。
「親父…………《婚約者》はそれ自体が強化される訳でもなく、そもそもの魔力供給ですら見込みが無い。なのにオヤジより弱い俺が戦えだと? 無理があるとは思わないのかよ」
「今から強くなればいいだけの事だ。毎朝巻き藁百回突く事だな」
それは毎日欠かさず鍛錬すれば月ごと、年ごとに成果が出る物だろうが。
今からやったって、最悪の場合は明日にでもはち合わせる可能性があるのに、余りにも遅すぎるんだよ。
……もっと言葉をぶつけたかったが、何を言った所で最終的に暴力で黙らせようとする、理解し合えない不毛な会話となると俺は口をつぐんだ。
「理解があるのは良い事だ。この家でわしに逆らったらどうなるか、分かっているだろうしな」
最悪断固拒否だと家にこもって抗っても、力付
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