第十二話:傾かぬ
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前からボコスカ殴られてはいれども、しかし愛されてはいるのだろうと分かっていたが、ノリではなくきちんとこうした事を考えて協力を申し出たと分かる。
まあ親父は常識人と言えは常識人なのだし、楓子やお袋のようなノリで、ワシが力になるなどと言う筈もないか。
「ダーーーメーーーーッ!!!」
……が、折角親に対して感動していたのに、お袋の要らない大声がぶち壊して来た。
何で駄目なのかは薄々分かる。そしてその理由が、余り状況と結びつかない上、こじ付け且つラブコメ路線である事も。
「ダメ! 浮気なんかダメっ!!」
「ま、待て優子さん! 今の会話を聞いていたろう? コレは己の不備をから来る行為であって、決して浮気などでは……」
「ついさっきまで娘みたいだって言っていた子に不潔だわ! 京平さんは私の物じゃあないと嫌なの!」
「し、しかしだなぁ……それでは余りにも理屈がなっていないと……」
「いーやーなーのーっ! 誰にも渡さないのーっ!」
ほらな? 見事に当たった、嬉しく無い。
飛び付き、唇をとがらせ、ひたすらに駄々をこねる。全く……苛立たせる天才だ、お袋は。
詰まる所自分が幸せであれば、それでいいと……息子が不幸であろうと良いと思っている、と取られても不思議ではない言葉なのに。
極論言えば、それがラブコメ的展開で有れば、最悪ぶっ倒れてしまおうといいと思っているんだろう?
親父は見なおしたが、お袋は尚見下げるばかりだ。
「あたしはママの気持ち分かるなぁ……」
「手のひら返しが早すぎだろうが」
「あたしはその場の欲望に忠実だからいいのっ!」
「お母さんだってそうよ! だからいーやーなーのー!」
ああそうだ、失念し掛けていた。この人はほかならぬ『楓子』の親だったな。
そして楓子はお袋似とくれば……もう考えるまでもない。
「どうしてもというなら私を倒してからにしなさい!!」
「……ほらよ」
ほんのちょっとだけ、踵でお袋の脚をつつく。ダメージなどヒョロモヤシな人物だって、感じはしないだろう攻撃ならぬ攻撃。
「ひぎぃぃぃぃい!!」
なのにお袋はひっくり返りやがった。痙攣も大きいし、態とらしいにも程がある。
「家庭内暴力とは、良い度胸だな麟斗!!」
「ぐっ……!!」
それを見抜けない盲目的な愛を持つ男から、これぞ本物の家庭内暴力と言える拳骨が跳んできて、俺は痛みに顔をしかめた。
……だが、そこで少しばかり何時もと違う現象が起きる。
「ぬぅ……? なんだ?」
「如何した親父」
「いや……いや、何でもない」
俺を理不尽に殴った親父が自分の拳を見つめ、不可解な事でも起
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